同著者の『戦争の近現代史』が大変面白かったので出版時に話題になったこの本も気になってはいた。何故そのとき読まなかったかというと

 

1.何やら宿命論的なタイトルが嫌

2.『戦争の近現代史』のプロフィール写真は若くて美人(かなり好み)だったのにテレビで見た加藤陽子さんは結構なおばさんだった

3.子供向けの入門書というのがあまり好きではない

 

 といった所だ。しかし読んでみたら内容は中高生向けとは思えないほど高度で、自分がその頃にこの講義を聞いたらちんぷんかんぷんだったはずだ。

 

 著者も最初は聴講者のレベルを計るように質問を投げかけているが鋭い答えがガンガン出てくるので手加減しなくなったのだろう。生徒は栄光学園の中高生。わかるわかる、小学校の頃に学年(クラスではなく)でいちばん頭のいいやつが行く学校だった。

 

 また、タイトルから感じた宿命論(あの戦争は避けられなかった)というのは誤解だった。ニュアンス的には『負けると分かっていたけど日本人は「戦争」を選んでしまった』といった感じか。

 

 著者があとがきで言うとおり、日清戦争前から太平洋戦争に至る地図の変化を眺めているだけでも教えられることがある。なんだか『銀河鉄道の夜』の地図の挿話を思い出した。

 

 個人的に面白かったのはレーニンが後継者としてスターリンを選んだ理由は彼が軍事的カリスマではなかったからだ、といった下りだ。そういえばフルシチョフも『スターリン批判』のなかでスターリンの軍事的無能さを糾弾していた。しかし坊主憎けりゃ袈裟まで憎しで過小評価しすぎな部分もあるのではないかとも思っていた。

 

 いまプーチンを支持するロシア人は彼にスターリン時代の強いロシアを重ね見ているらしいけど第二次大戦で死者が一番多かったのはソ連だったわけで、今のロシアはデストルドーにでも取り憑かれているんだろうか。