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【イミント】

画像、映像など視覚的情報を収集して分析し情報を得る手法をイミント(Imagery intelligence)という。その情報は、情報収集衛星、無人偵察機をはじめ、監視カメラの映像や盗撮した画像など多岐に渡るが、特に重視されるのが衛星と無人偵察機である。

 

情報収集衛星は宇宙空間を周回しているので、他国の領空を侵犯することなく世界中どこでも地上を撮影することができるのだ。ニュースなどで、北朝鮮のトンチャンリなどにあるミサイル発射基地の写真をキャスターや専門家などが解説している様子を見た人も多いだろう。その写真は情報収集衛星によってもたらされたものである。

 

米国など先進国が運用している偵察衛星は、我々が利用できるグーグルアースのようなものとは違ってたいへん精度が高く、個人を判別できるほどであるという。

わが国も、米国ほどの精度ではないが情報収集衛星を運用しており、2001年、内閣官房に属する「内閣情報調査室」にわが国の安全の確保、大規模災害への対応等に関する画像情報の収集分析を担う「内閣衛星情報センター」がおかれ、イミントを担っている。

 

ちなみに、情報収集衛星には光学衛星とレーダ衛星があり、光学衛星は高性能の望遠デジタルカメラのような仕組みで詳細な写真を撮影できるが、夜間や悪天候時には不向きである。レーダ衛星は電磁波を放出し反射波を検出する仕組みで、解像度はやや劣るものの、夜間や悪天候時でも撮影できる。

 

現在内閣衛星情報センターでは、光学衛星2機、レーダ衛星2機の4機体制をようやく整え、地球上のどこでも1日1回以上撮影することができるようになった。

 

他にもイミントを担う組織として防衛省の情報本部がある。民間の衛星から提供された写真の解析、デジタル地図の作成、地理空間情報の分析を行う「画像・地理部」がおかれているが、防衛省は現時点で情報収集衛星を保有していない。(今年1月に打ち上げた防衛省初となる同省専用の衛星はXバンド通信衛星であり、情報収集衛星ではない。)

 

情報収集衛星の長所は、ヒューミントが困難な場所においても人を危険にさらすことなく世界中どこでも監視ができるという点である。大使館も置けず、厳しい監視体制が敷かれている北朝鮮に潜入してヒューミントを行うことは大変困難である。スパイ行為が発覚した場合、言語に絶する拷問が待っているだろう。しかし、衛星からの画像によって担当者を危険にさらすことなく宇宙空間から情報を得ることができるのだ。

 

もちろん、衛星による情報収集にも短所はある。

 

第一に、見れる場所、時間が限られている。

地下や建物の内部を見ることはできないし、地球を周回する衛星がある地点を監視できる時間は限られており、相手が衛星の軌道を予測し、衛星が上空にいない時間を狙って軍事作戦や部隊の移動、展開などをするようになれば、情報を得ることはできない。それに対応すべく、日本の内閣衛星情報センターは、撮影時間の多様化及び回数向上のため、情報収集衛星を8機、加えてデーター中継衛星2機の合計10機体制を目指している。JAXAは先月17日、情報収集衛星第5号機となるレーダ衛星の打ち上げに成功したと発表している。

 

第二に、基地に駐留する正規軍など、大規模で決まった場所にいる標的には効果を発揮するが、テロリストなど少人数で不規則に移動する標的には有効とは言えない。

 

第三に、衛星の開発、運用には莫大な費用が掛かり、ヒューミントなど他の諜報活動と比べてコストがかかる。そのため、情報収集衛星を運用できる国は限られている。裏を返せば、衛星を運用できるだけでもアドバンテージを持っているということでもあり、それを日本は有していると言えるが。

 

第四に、目に見えないもの、特に人間の内面までは知りようがない。A国が自国艦隊をある海域に移動させたという事実は衛星などで分かるが、為政者や軍の幹部がどのような意図をもってさせたのかは視覚情報からは分からない。以前本ブログでも述べたが、その場合ヒューミントなどが有効である。

 

 

 

 

情報収集衛星に加え、無人偵察機によるイミントも重要になっている。

有人の航空機による偵察は、パイロットの身体的負担を考えると何10時間もの長時間を飛ぶことはできず、撃墜されてパイロットが死亡する恐れがあるため他国の領空に接近させることは困難だ。そのため、燃料がある限り何時間でも長距離を飛行でき、撃墜されても人的被害が発生しない無人の偵察機が多用される。

 

 

写真・防衛省HP 「滞空型無人機(グローバルホーク)の三沢基地配備(平成31年度末以降)について」より http://www.mod.go.jp/j/press/news/2016/12/21b.html

 

わが国でも2019年度以降、アメリカのRQ-4グローバルホーク無人偵察機(写真)を青森県三沢基地に配備する予定である。偵察衛星とは違い、軌道にかかわらず臨機応変に継続して飛行でき、真上から撮影するだけでなく標的により接近してな多様な角度から撮影できるというメリットがあるため、衛星の弱点を補う形で共にイミントの中核を担うだろう。

 

 

 

 

これらイミントの視覚情報に地理情報を融合させ、地球上の地理的形状や物体の動きなどを把握、分析さらには予測する情報活動を「ジオイント(Geospatial intelligence)」と呼んでいる。

気象衛星からの画像に加え、湿度、海流、気圧、山などの地形を考慮して行う気象予報は、まさにジオイントの一種と言えないか。

 

 

文献リスト

・ニュースなるほど塾 『諜報機関あなたの知らない凄い世界』 (2012) 河出書房新社

 

・国際情報研究倶楽部編『世界の諜報機関FILE』(2014)Gakken

 

・小林良樹著『インテリジェンスの基礎理論』(2014)立花書房

 

・内閣情報調査室 平成28年度採用パンフレット 

http://www.cas.go.jp/jp/saiyou/saiyou_panf.html

 

・JAXA HP 「H-IIAロケット33号機による情報収集衛星レーダ5号機の打上げ結果について」http://www.jaxa.jp/press/2017/03/20170317_h2af33_j.html

 

・防衛省情報本部HP http://www.mod.go.jp/dih/

 

・写真・防衛省HP 「滞空型無人機(グローバルホーク)の三沢基地配備(平成31年度末以降)について」

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2016/12/21b.html

 

・日経ビジネスオンライン

「日本版〝スパイ衛星″は何を観る?政府の運用組織関係者を直撃」http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130823/252568/?P=2

・産経ニュース

「防衛通信衛星を打ち上げ H2Aロケットに搭載 種子島」

http://www.sankei.com/life/news/170124/lif1701240026-n1.html

 

 

参考文献 URL

筆者は専門家ではない。一サラリーマンが、趣味で書籍や新聞記事、官公庁HPなどを参考にしながら自分の見解も交えつつ執筆している。そのため、間違いなどがあるかもしれない。その場合は論拠となる情報源とともに指摘していただければ幸いである。必要があると判断した場合、機会を見つけおわびして訂正させていただく所存である。なお、この内容は筆者が所属するいかなる組織、団体の見解も代表するものではない。