2015年1月にタイ南部のマレーシア国境近くで98人のロヒンギャ族が5台の車から発見され、その後、2015年5月には、タイ南部の密林で70ヵ所以上のキャンプ跡地、32人の遺体、100人以上のロヒンギャ族の人達が見つかる事件があった。更に同月にはアンダマン海に放置されたロヒンギャ族の密航船が相次いで発見され、大掛かりな人身売買ネットワークの存在が浮き彫りとなり、東南アジアのみならず国際的にも大きなニュースとなった。

 

その後の捜査により、マナット陸軍中将、サトゥン県知事のパチュバン氏、パダンベサール市長のバンチョン氏を始めとした軍人と行政官を含めた100人以上が関与する大掛かりな人身売買ネットワークの存在が発覚し、2015年の6月に関与された人物が告発された。その後、2年かけて捜査・審議がなされ、ようやく、7月19日に刑事裁判所にて判決が下された。

 

判決によれば、マナット陸軍中将は禁固27年、パチュバン氏は禁固78年、バンチョン氏は禁固75年とのこと。ただし、法的には判決がどうでああろうとも、50年以上は服役できないこととなっているようだ。(この辺りの仕組みはよく分からない。)

 

軍事政権下で軍人を裁くということで、通常の刑事事件の場合、もみ消しも十分考えられるところ、この事件は、ロヒンギャ族が絡んでいたこともあり、国際的にも大きな注目を集めており、軍事政権としても、もみ消しできなかったようだ。プラユット首相は、「この事件は軍人以外にも多くの関係者がおり、メディアは軍人にフォーカスを当てすぎる。一部の人間の問題であり、軍全体としては人身売買ネットワークに関与していない。」と発言しているとのこと。

 

陸軍中将を含めた事件が、有罪ということで一審判決が出たのは、評価すべきことだが、国際的な問題であるロヒンギャ族が絡んでいなかった場合に、同様の結論となっただろうか。

 

2015年5月~6月の事件をきっかけに、行先を失ったロヒンギャ族の取り扱いをどうするかの国際会議がタイ政府主導でバンコクで開催されたが、その時、ミャンマーは自国民ではないから知らないとのスタンスを明確にし、イスラム教国のインドネシアやマレーシア等も受け入れを拒否し、ロヒンギャ族の取り扱いが非常に難しいということが白日の下に晒された。

 

そういった経験を踏まえて、おそらく、タイ政府としても、一中将を庇うより、この事件に蓋をして、ロヒンギャ問題との関係を断ち切った方がメリットがあると考えたと推測してしまう。