俺が好きになった人は男性でした。
でも君のの事が大好きで肩を並べたいと思いました。
こんなに動かされたのは初めてでした。
















-光が無くて闇も無い(前編)














「ずっと言わなきゃならないと思ってたんだけど」
「ん?」


「男だからね、ちゃん付けやめてね」
「・・・・えっ」



えっ。

俺は生まれたときから目が悪い。
悪いと言っても眼鏡をかければ見える程度でもない。
ずっと曇りガラスを除いてる・・・と言ったらいいのだろうか?
ぼんやり見えるのを良い事に普通の中学校に入学できたくらいだ。
なのであまり苦労は周りが思った以上にしてなかったとおもう。
光は見えるしね。
歩くときは杖使わないと怖いけどね。

人の顔なんて輪郭や髪がある程度にしか分からない。
声の質で判断するしか方法が無い。

ここまで来て理解してもらえるだろうか。
俺が今何時ものように放課後教室で遊んでいる相手の性別を誤解していたのだ。



「な・・・なんで俺が女だって思ってるって分かったんだ!?」
「だってあんたいっつも俺の名前にちゃん付けてたじゃん、そりゃあ分かるよ」


確かにちゃん付けてたよ、嗚呼付けてたよ。
相手の名前は由貴(ユキ)、普通に女の子でも言う名前だろ!?
でも何よりも・・・・。





「ねぇ、聞いてる?」
この声が綺麗なんだ。




「あ!聞いてる聞いてる。ごめんな勘違いしてて」
声変わりしてないような高くも無く低くも無い中世的な声が俺の曇ってる視野をゆいつ透かしてくれるんだ、綺麗。




「ねぇあんたさ、なんで女だと思ったの」
「名前と声」


「正直だね」
「ここまできたらそりゃぁ言うしかないだろ」


かなり恥ずかしいけど正直に言ったら俺の好きな声で空気を揺らしてた。
笑ってるのかな。




「あんたのそうゆうバカ正直なところ嫌いじゃないよ」
あまり声に出して笑わない君が空気を揺らすぐらい笑いながら声を出している。
なんかこっちも恥ずかしかったけどそんなことどうでも良くなった。




「由貴ちゃんさ」
「だからちゃん付けやめろよ」


「どんな顔してるの?」
「おい、ちゃん付け修正しないのかよ」


「ねぇ、どんな顔してるの?」
「ちょーイケメン」


「まじで!?」
「うそ」


こんな会話をしてるだけでも幸せだなって思う。
君が隣で笑ってて俺がその隣で笑えてる。
本当にそれで幸せ。
やっぱこれって恋なのかな・・・・。



いやいや、恋じゃないだろ。
相手は男、俺も男。
凄く問題あるだろ。
同性愛なんて単語があるけどこれが同性愛なのかなんて高校一年の短い人生じゃ分からない。



「そろそろ帰ろうよ」
「あ、暗くなってきたし帰ろう」


由貴ちゃんが立ち上がり椅子を戻す音が響くと俺も釣られて立ち上がった。



「・・・っ!?」
「っと・・・立ち上がるときは言ってっていっつも言ってるでしょ」


立ち上がろうと思ったら椅子に足が絡まって倒れそうになる。
それを支える由貴ちゃん、これもいつもものこと。



「ごめんごめん」

実はこれ俺を見てくれてるって優越感に浸ってるんだ。
由貴ちゃんごめんね。
ずっと見てて欲しいんだ。

俺と由貴ちゃんは家が近い。
だから由貴ちゃんが急いで帰らない時は大抵家まで送ってくれる。
それも独占できる時間。
こう考えると俺は独占欲があるみたいだな。



いやいやいや!
独占欲ってのは好意を抱いてる人にたいしてなるんだよな?
友情・・・でもなるのか?
なるよね?なるもんな、多分なる。
そうじゃなきゃ困るってか・・・どうしていいのか分からなくなるよな。
女に惚れた事も無い、何よりもどこが好きだと言われたら不順な理由。





声に惚れた。





不順以外の何者でもないだろ?
目が見えるやつからすれば「顔が良いから好きだ」とでも言ってるみたいなもんだ。
うわ、そう考えると俺最悪だよな。
頭のなかの神経が全部からまった感覚になる、麻痺する。

何時も通りの放課後、帰路なのになんでこんなに考えてるんだろう。



「ねぇ、さっきから何考えてるの?」


俺がバランスを崩してからずっと止まってるのをみて不振に思ったのか声をかけてきた。
時計を見ると10分ほどだまって立ち止まって居たようだ。



「ごめん、なんか色々考えてたらこんな時間になってた」
「なんだ、恋煩い?」


「大体あってる」
「はい?」


冗談っぽく俺が笑って返すと由貴ちゃんも訳がわからねーと言いながらも笑って流してくれた。
机の横に置いてある杖を手にして何時ものようにゆきちゃんの肩に空いている手を置き歩く。
昇降口を通りそのまま長い平地を歩く。
周りには高い建物は無くただ広いだけの水田が広がっている。
まだ水田に田植えがされたばかりで水面が多少見えていた。
俺の目でも辛うじて強い光の反射は捉える事が出来た。
もう夕暮れ、日差しが赤く強い。








「由貴ちゃんから見て俺ってどんな見た目?」
「だからちゃん付けるなって何度・・・」


「ねぇ、どんな感じ?」
「ちょーブサメン」


「え!?」
「うそ」




他愛も無い会話。
いつもの帰路。
好きかも知れない同姓の相手。
このまま時間が止まってくれればいいのに。
そしたらすごく幸せなのに。
好きと言う感情がどんな意味をなすか分からないけど由貴ちゃんと一緒に居たいのは変わらないし側に居て欲しいのも変わらない。




「由貴ちゃん」
「だからお前何度いわせれば・・・・」



「俺さ、明日から学校休んで目の手術してくるんだ」









水田が広がるだけの壁が無い所に時期にしては珍しい風が吹く。