どうして来たのか?

と尋ねられたら

「君を笑いにきた。そういえば君の気が済むのだろう?」

と返事を用意していたのに、
くずたんはいなかった(*1)
いや、居ないのは分かっていたけど。

喫茶店で写真・・・
すぅっと記憶が甦ってくる。
二十歳になるかならないかのころ、
夕陽ヶ丘の住宅街にある喫茶店で
予備校をさぼって覚えたてのタバコを
くゆらせてたいたころ。
壁にかかっていた着物姿の女性の、
写真。
鮮やかな紅が印象的で、
何度も何度も見返していた。

オレもいつかはこんな写真を撮ってみたい。

などと思ったような気がするが、
カメラを手に入れても被写体は手に入らなかった。
いや、そうでもないか。
十何年も前、コスプレで覚えた写真と人脈で
何人もの女の子を撮った。
だが、結局、自分の納得のいくのは撮れないまま
あの日々は終わった。

当時から廃墟写真ムーブメントはあった。
同人誌イベントから飛び出して、外へと向かった人たちは
各地の公園で(鶴見緑地とか・・・ね)飽き足らず
廃墟へと足を伸ばしていったのであった。

誘われて行ったような気もするがよく覚えていない。
あの頃の写真はすべて処分してしまった。

もう一度、女の子を撮りたい、と思うものの
あの過渡期、写真が写真家のものから一般人のアイテムへと
変わっていったデジカメの黎明期だからこそ、
オレのようなおっさんでも需要があったのだと思う。
デジタル一眼レフは手に入れたものの、
ほとんど触っていない。
撮影会には興味が無い。
イベントの雑踏は「シャッターを押すこと」だけに
終始してしまいそう。

こうやって自分の作品をカフェに並べて展示会をひらいてしまう
くずたんに羨ましさをさえ感じる。
写真を撮ること、ではなく、その外へ向いた行動力に、だ。

あのころ何にでも夢中になれた、オレのこころが
今は枯れてしまっているのだろうか。

廃墟は、実はオレの中にあったのではないか・・・?

(其処に少女はいないけど)

という結びで筆を擱きます。

いつか、また、女の子を撮りたいな・・・。

くずたん、ありがとう。
この秘密めいた空間で過ごす有りがたき午後の時間に、感謝。

注1:これを書いてる途中、くずたんはあらわれた。