思いのほか仕事が早く終わった。
諦めていたライブ参戦が俄かに現実味を帯びる。
ダッシュだ!
途中、作業ズボンのポケットから携帯電話が飛び出して
10m以上スライディングして傷だらけになったが、
そんなことは些事に過ぎない。
・・・嘘、涙目になったorz

タイムズが見えたら彼女達の美しい調べが聞こえてくるはず。
セイレーンのように船乗り達の心を惑わす、あの歌声!
・・・あれ、聞こえないぉ?
ひょっとして、今日はアカペラで歌っているのか?
もう終わったってことないよね?
俺、走ったのに。
携帯、傷だらけになったのに。

角を曲がって人だかりが見えた。
いつもよりずっと大勢の人が集まっている。
雲霞のごとく人が集まっているので、真ん中に誰がいるのか分からないぐらいだ。
でも、分かる。俺には分かる。だって俺ザ☆ミルクファンだもん。
あの中心にいるのは3人のレディー!ザ☆ミルクに間違いない!!!
結局、ライブには間に合わなかったが、そんなことはどうでもいい。
「3人に会えた」その事実が大事なんだ。

そして彼女達が俺に気付いてくれた。
「爺さん!」(あれ、俺の聞き間違い?)
もとい「Dさん!」

もう終わったと思っていたのに、急遽あの曲のサワリを
歌ってくれることになった。新曲、あの「No.1」だ!
だって涙が出ちゃう・・・女の子だもん
皆、右人差し指を天に向けるんだ!
そこから、この曲は始まるのだから。

歌が終わり、一本締め。
どうやら二回目の一本締め。
遅れてきた者のために二回してくれたのだ、と都合のいいように
解釈して幸せに浸れるのはヲタクの特権。人はソレを妄想という。

「Dさん、ベロニカは?」
ゅりこさんが笑顔で聞いてくる。
「いや、あの、ぼ、ぼ、ぼくは、し、し、しごとががが」
「Dさん、ベロニカは?」
ゅりこさんが笑顔で聞いてくる。
「いや、あああ、いいい、ううう・・・」
「Dさん、ベロニカは?」
ゅりこさんが笑顔で聞いてくる。
「はい、行きます。行かせて頂きます!前売り券買います!」
ゅりこさんがさらに笑顔になった。
3人が喜んでくれるなら、俺はそれでいいや。

「Dさん、髪の毛黒くなりました?」
おっとさすがに女の子は気付いてくれるんだなぁ。
本人すら忘れていたのに。

マターリとした幸せな時間が過ぎ行き、
3人は日本橋の雑踏へと消えていった。
自分達の名前が入ったTシャツを着たまま。
俺たちも手を振り、彼女達も笑顔で手を振ってくれる。
大丈夫、もう3日もすれば京橋で、また会えるんだから。
あれ?俺、いつの間にベロニカに行くことになったんだろ?

さ、カフェにでも行って時間を潰そう。