宮城谷昌光「風は山河より」を読む | サトウユウイチのごすぺる放浪記

宮城谷昌光「風は山河より」を読む


ユーリのごすぺる放浪記

 今年読んだ本の中で一番印象に残ったのは、愛読している宮城谷昌光さんの「風は山河より」でした。


 いつも春秋戦国時代の中国を舞台にした小説を中心に書いている著者が日本史を手掛けたということで、どんなものだろうと思ったのですが、舞台は三河の国の山の中。主役は野田菅沼家の三代。

 ひとりの人間を描くのにその父や祖父の代から書きはじめるというのは著者のいつものスタイルですが、それにしてもマイナーなテーマを選んだものだと思いましたね。

 でも実は、代が進むにつれて家康、信長、信玄といったビッグネームが続々と登場する仕掛けになってます。


 さらに主要な登場人物だけでも何十人と登場するのに最初はとまどいますが、実はこれも戦国時代が武将の個人プレーの時代ではなく、「家」と「家」との団体戦の時代として描くのに一役買っています。


 個人プレーのチャンピオンだと思っていたあの織田信長も、父信秀の存在あればこそと思うと、父の葬儀の席で位牌に焼香の灰を投げつけたという逸話も、その陰影を変えてきます。