サッカーはチーム全体のバランスを考え るスポーツでもある。もちろん、左右のSB のバランスも重要になる。たとえば、バル セロナの場合で考えると、ボールを保持し て攻撃している状況では、両サイドバック の位置を高くして、サイドからも攻撃をし かける。
もちろん、バルサのボールポゼッション 率は高いので、だからこそ両SBが積極的に 上がるリスクを冒せるということでもあ る。このときピボーテ(守備的MF)のブス ケツはバランサーとして両CBの間に下がっ てくる。そして、CBは開いてサイドのス ペースを埋める。
これに対してザックジャパンは、基本的 には両サイドバックが同時に上がることは なく、どちらかはバランスをとって守備ラ イン近くにとどまる。このとき中央のダブ ルボランチが縦関係になって、ひとりはCB の近くにいる。ここの役割は遠藤保仁では なく、長谷部誠が上がらずに残るシーンが 多い。
これはどちらかといえばオーソドックス な形であり、この部分については、ザッケ ローニ監督の手堅さが表れていると思う。 SBの片方が上がったら、もう一方は自重す る。だから、左の長友佑都がどんどん前に 行けば、やはり右の内田篤人はバランスを とるために前に行きづらくなるのは確か だ。
反対に、左SBの長友が控え目にしていれ ば、右の内田はどんどん行くべきだろう。 そこはやはり、両サイドバックがお互いを 見て判断する部分もある。ザッケローニ監 督としても、このあたりのバランスは約束 事として指示を出しているのではないだろ うか。
逆にサイドバックに両方行けという、た とえばセレッソ大阪や柏のようなスタイル もある。これはブラジル代表のスタイルに 近く、両サイドバックが高い位置を取る と、ボランチの選手がバランスを取って、 サイドのスペースをケアする。
いずれにしても、サイドバックの選手は 全体の戦況を広い視野で見ていないと務ま らないということだ。
ただ、今の日本代表でいえば、長友はど んどん前へ行くタイプ。その場合、サッ カーはアクセルとブレーキが必要なスポー ツなので、アクセルの長友だけでなくブ レーキを踏む選手が必要になる。もちろ ん、慎重になりすぎてブレーキをかけすぎ ても、それはリスクをとらないことになっ てしまうので注意が必要でもある。
以前、オシムさんが選手に『リスクをか けなさい』と言っていたが、これは、ヨー ロッパや南米の選手に比べて日本人は消極 的な傾向があるので、意図的にリスクをか けさせなければいけないと考えていたから だろう。
気をつけなくてはいけないのは、リスク をとることが、ギャンブルになってはいけ ないということ。戦況を見て、今がチャン スだと思ったらリスクをとって行けという ことで、ギャンブルをしろということでは ない。行かなくていいと思ったら行かない 判断も必要になる。
何でもかんでも攻撃に上がっていき、リ スクがデンジャー(危険)になってしまっ てはそのプレイはゲームを壊してしまう。 つまり、その選手は戦況判断ができていな いということだ。そのため、今どういう状 況なのか、どこでいつ攻撃に出るべきなの か、多少守備が薄くなっても行くべきか否 か。その判断がうまくできない選手は起用 されないということになる。
現在の日本代表では、長友は積極的に前 に出て、ゴールに直線的に向かっていく し、そうすることによって相手のアタッ カーを押し込んで、守備もしているという 面もある。また、長友にはカウンターをさ れてもすぐに守備の位置に戻ってこられる 走力とスピードもある。それに、前線の選 手のサポートのために労を惜しまずに走る こともできる。
ただ、長友が上がった背後に大きなス ペースができてしまうので、そのカバーが できる選手が必要になり、フィールドの全 選手がそれに合わせて動く。もちろん、反 対のサイドにいる右SBの内田もバランスを とる動きをしている。
このようにバランスを取れる右SBでない と、今のザックジャパンではあまり起用さ れないのではないかと思う。チームとして 長友とのバランスを考えた時に、左右の選 手のバランス、あるいは相性は非常に重要 になってくる。当然両方が攻撃参加できた 方がいいが、チーム全体のバランスが崩れ る瞬間があってはいけないということも考 えなくてはいけない。
どちらかが自重する必要もあるし、相手 の出方に合わせるときもある。当然攻撃に 出ていくこともできるが、同時にバランス も取れるという意味では、内田のバランス のとり方は非常にいいので、長友と内田の 関係性、左右のバランスがいいとザッケ ローニ監督は考えているのだろう。もちろ ん、酒井宏樹や駒野友一、酒井高徳もいる ので、今後どのような組み合わせになるか 楽しみでもある。
現状、左の長友が攻め上がる頻度が高い 分、内田はそんなに上がらずにバランスを とっていることが多いので、結果的に物足 りない印象にはなるかもしれない。ただ、 それは実は、長友が積極的に行っている部 分のリスクを内田がヘッジ(回避)してい るということでもある。
そう考えると、全体のバランスを取って 動ける選手は、少し損な役回りなのかもし れない。なぜなら、ボールから一番遠いと ころで、つまりボールがないところでバラ ンスを取ってリスクマネジメントをしてい るので、そのプレイをしっかりと見て評価 するのは指導者ぐらいしかいないからだ。 スタジアムに応援に行っている人は、どう してもほとんどがボールウォッチャーにな るし、テレビ観戦しているときはなおさら そうなる。
だからテレビに映らないところやボール のないところで、事前にピンチを防ぐよう なポジショニングを取る動きをしている選 手というのは、現場の指導者や選手たちの 評価は高いが、スタジアムに見に来ている お客さんやテレビで観ている人にとって は、評価しづらいのではないかと思う。
テレビで観戦していると、ガンガン行っ て仕掛けている選手はもちろん評価が高い が、それは実は、モニターに映っていない 選手がうまくチーム全体のバランスを取っ ているからガンガン行けているということ でもある。
代表戦をテレビで見ていても、どんどん 前に行く長友のプレイはすばらしいし、評 価は当然高い。しかし、チーム全体として 考えた時に、内田の存在や、逆サイドにい る選手のカバー、センターバックやボラン チの選手のカバーがあるから長友が前に行 けているということも理解してもらいたい し、全員が連動しているということもわか ると、観戦がより面白くなるはずだ。









