お目覚め恒例
カーテンの除幕式をにぎにぎしく…
ん?
「ギャ~~~~~~~!」
おいおいー!もう競馬の時間かよ!と飛び起きた犬ども
慌ててハウス!
12月23日。有馬記念の朝。
札幌は30センチ強の大雪で絶望的なすべり出しになった。
寝る前にきれ~に雪かきしたっていうのに
ナメたマネしやがって!

こんな風に遠慮なしに雪が降り積もると
ひとり暮らしの御老人が気になってしまう。
この分だと来月はもっと恐ろしいことになりそうだ。

私に赤いママさんダンブ(大型の雪運び道具)を持たせれば
右にも左にも敵なんかいない。
負けず嫌いの導火線に火がともる。
無表情でゲートに入った。

「アタシを誰だと思ってんだ…」雪かきスタート!w

1時間半かかって
ようやく雪との死闘を終えた。
途中、何度もさし返してくるかなり危ないレースだったが
軍配はもちろん私。
北海道で
雪に負けるということは死ぬこと意味する。
有馬記念をやる前に
死んでたまるか。

命の湯に浸かり
この1年をふり返る。
2日も3日も寝ないで馬券を考えたり
ひとの予想をパクるという反則技も繰り広げながら
結局さっぱり的中しなかった。
そのたびに
ここのブログも未練タラタラに汚しまくり
終いに書くのも嫌になって
気がつけば更新と言う二文字も削除していったっけ。

2年前。
札幌競馬場で
栗山のお蝶夫人こと馬券番長と
総流しのネエサンと出会ってから
今年の有馬記念もウインズ集合となった。
去年ブエナビスタ引退レースであった有馬の結果は
エイシンフラッシュを切って全員オケラ。
「よいお年を…」と
死にそうな声で別れの挨拶をした狸小路は
まさしく実録地獄の3丁目だった。

その時の悪夢がよみがえる今朝のトップニュースは

「エイシンフラッシュ。デムーロから皇成に乗りかわり」

3度目の有馬挑戦で
勝利の方程式を紐解くはずだった天皇賞秋馬は
日本で一番愛されている騎手の名前と一緒に奈落の底へ。
ちっちゃい石ころひとつのおかげで果かなく消えてしまった。
くっそ!いっそのこと吸いあげたろか。

小回りの利く息子の軽自動車を飛ばす。
大雪のせいで国道は大渋滞。
ハンドルを握ると凶暴になる私は
前方や右横につける車が
バカあるいは敵の類に見えてしまう。
妙な所で殺人犯になる恐れがあったので
麻生付近であえなく下馬。
乗り慣れない地下鉄でウインズB館へ。

私の到着を確認した馬券番長開口一番
「でむ~~~ろぉ~~~!(涙)」
それは今朝
1億2千万人すべての日本人が叫んだお悔やみの言葉ですよ。

ただ
私はまだエイシンを諦めてはいなかった。
ここでコーセイが無様な騎乗をするとは到底思えない。
今日は天皇誕生日。大病を乗り越え
ご無事の満79歳をお迎えすることができ
心からのお祝い申し上げたい。
てんちゃん、昭和天皇のようにまだまだ長生きしてね。

今上天皇は学習院馬術部の主将で競技会でも優勝する腕前であったという。
出室騎手が最敬礼して行幸啓の喜びに答えたあの日から
エイシンフラッシュが「何か大きなもの」にふさわしい馬であるような気がしていた。

各紙予想屋陣営をざっくり見渡すと
素人大衆1番人気のゴールドシップに印を付けない傾向に
レースの荒れを期待していた。
いつもいい加減な予想を書いては
間違っても謝罪したりしない陣営の口車には乗りたくなかったけれど
どこかにゴールドシップの死角があるとするならば
「ヘタすぎる発走」と
「マクリ」が届くかどうかの2点。

逃げ宣言をしたアーネストリーと
ビートブラックの2頭大逃げの怖さが角材になって(訂正しましたw)
後頭部を何度も殴り続けていたけれど
生まれつきの石頭とこの言葉に救われた。

「軸はゴールドシップしかいない!」
馬券番長には迷いはなかった。

私たちがそれぞれ何気ない愛情で組み立てた馬券は
奇しくも同じようになった。

軸ゴールドシップ。
相手エイシン、スカイ、オーシャン、ルーラー、ダーク。
穴予備ナカヤマ、ルルーシュ。

番長はフォーメーション。
私とネエサンはゴールド1頭軸流し。
ともに3連複を選択した。

姉ポルトフィーノを髣髴させるルーラーの華麗なロディオスタートから
すべては始まった。
ウイリアムズでなかったら
落馬競走中止になっていたかもしれないと思うとぞっとする。
ゴールドシップももれなく出遅れた。

逃げるアーネストリーとビートブラックだったが
本格的に逃げようというわけでもなく
後続のペースメーカーに専念していた。
誰ひとりかかるわけでもなく
淀みのない美しい流れをスダンド前で披露する。
後方2頭は依然ゴールドとルーラーだった。

私はまだエイシンを信じていた。
「天皇陛下は、きっとあなたのことを好きですよ」
去年は彼を切って泣いた有馬の呪縛を解き放つように
密かに買ったエイシンの単複馬券。
王者は王者らしく
誰が乗っても走らなきゃいけない。
出室さんも遠くから祈っています。キミは強いんだよって。

ゴールドシップは面舵いっぱいに
ルーラーを連れて上がってきた。
最後のコーナーでは
ディープインパクトが芦毛になったと思うほど
カメラワークが酷似していて
この瞬間に彼の勝利を確信。

「キター!」

知らない爺さんが声をあげた。

先週コディーノ!と叫び過ぎて
声が出ない私は口を押えて念仏を唱える。
エイシンフラッシュも1度は先頭に立ち
見せ場も十分に作ったが
中からオーシャンブルーが飛び出し
大外から
次元の違う脚を持つ2頭が飛んで来た。

「強い~~~~~~~!」

後ろでちんたら走っているように見せかけて
やっぱりこの2頭は来ちゃうんだね!
ゴールドシップの1完歩の飛んだこと。
内田騎手が勝利を確信したタイミングが早いのはそのせいだし
むしろ当然のことかもしれない。
いつもスリリングに勝つゴールドシップならではの有馬記念になった。

こんなことをいうと
「まーた俺をさしおいて爺さんか」と
父ステイゴールドがひがむのを承知で言うが
メジロマックイーンの無念を晴らす文句なしの競馬だった。

今日はまだ23日。
クリスマスでもなんでもない。
だいたいクリスマスは25日で
その前夜祭イヴの日が24日だ。
今の日本は
そんなことなどおかまいなしになっているが
それはまるで
25日がステイゴールドで
24日がメジロマックイーンみたいだね。
どこがメインなんだろう。
話が変になってきた。

3連複が的中して4000円ほどが戻ってきたが
私にはエイシンフラッシュのハズレ馬券が愛おしくてたまらない。
出室さんだったらだとか
なんでコーセイなのかとか
そんなことはどうでもいい。

懸命に走った。夢も見た。見せてくれた。
でも勝ち馬がとても強かったね。
お疲れさん。

「あらら、うちらの買った馬券。馬番がみんな仲良く並んでら!」

馬券番長がパーフェクト予想だと
もろ手を挙げて万歳三唱をしていたが
私はいつまでも
エイシンフラッシュのために買った馬券をみつめていた。