ミヤコは暇でした。
今度愛人として迎え入れられた家は礼節をとても重んじるので、一座の中で気ままに暮らしていたミヤコにとって マナーを守ると言うのは苦痛な事であり、主の許しもあってマナーを守る事は稀でした。
出来ないわけではないのです。
ただ、他人に催促されるのが嫌いで わざと規則を破るような事をするところがありました。
また、家主と他の家族は、家主のルーズさ故か あまり仲が良くないのでした。
それが理由か、ミヤコに口煩く言う者が少なかったのは ミヤコにとって多大な喜びでした。
他ではよく注意されてきたので家にいることが苦痛で、毎日を踊り、歌いながら嫌な事を忘れようと努めていたのです。
踊りはミヤコにとって 悲しみを忘れる、世を渡るための全てだったのです。
他人に干渉されず、自分の好きな時間が持てるというのは嬉しい事のように思えますが、今まで”自分の好きな事をする”余裕を持たなかったミヤコにとって 今、この時間は暇以外の何ものでもありませんでした。
暇だからと言って 裁縫ができるでもなく、料理ができるでもなく、踊りと容姿だけが武器だったので ”他の女は敵である。” といった誤った感覚が身についていました。
仲間との解け合いを学ぶ場がなかったのです。
”着飾る事は当たり前、男は私に尽くすべき”
幼い頃から身寄りのなかったミヤコに手を差し伸べてくれた団長以外に”自分の大切な人”はなく、団長から教わった事が全てでありましたので 世に偏見を持っていました。
世の中のものはほとんどが利用するためのものでした。
何のためにと人が問うても答える事ができませんでしたが 確かにそうなのでした。
まぁ、そんな訳で、久々に踊る気もしないで ただ ぼーっと窓の外を眺めていました。