〈絶望する女〉
夕方 黒に近い濃い紺色の薄暗い空
女は駅のホームに立っていた
照明の光に照らされて 女の顔は青白く浮かび上がった
背の高い女だ 僕より少し背が低いが170センチはあるように見える
沈滞した だらしない食生活を象徴するようにお腹が出ている
服装は銀座や六本木にいるパーティー帰りのOLのようだ
僕は女といっしょにホームに立っている
通過する赤い電車の窓に 僕と女の姿が途切れ途切れに映し出される
僕らは時折話をしている
僕は女の顔を凝視した
それは 今まで見たこともないような絶望した表情だった
僕はゾッとした その表情は僕の心に冷たく刺さった
なんといういやな表情をするんだと思った
無理はない 女の未来は決定されている
女の先にはただただ絶望が横たわっている
僕まで絶望的な気分になる
僕はもう女の顔を見たくないと思った
僕らは長い間毎日のように電話で話していた
女はたまに自分の話をしたが ほとんどは僕が一方的に話していた
僕は多くの冗談を言ったが冗談の隙間にかなりシリアスな話しもした
多くの男に遊ばれてきた女だ
多くの男に騙されてきた女だ
女は以前は銀座のジュエリーショップで働いたり 歯科助手をしていたという
空港で働いたり 大企業の子会社で働いたりもしてきたが 40代になり肉体の魅力がなくなってきたときに ついに力尽きた
頑張って貯めてきた貯金も つまらない日常生活の為に使い果たした
女は一年間実家から出なかったという
女は向精神薬を服用している
そして、タバコを1日3箱も吸う
毎日吐いているという
完全に精神を蝕まれている
肉体の魅力で生きてきた女の末路は哀れなものだ 僕は女を見てそう思った
女は誰にも言えない悩みを抱えていた
女は男に車に乗せられ 山奥に連れ込まれ抵抗したがそのあとホテルで犯された
女は中高と女子校だったので男とはどのようなものか知らなかった
女は僕には何でも話した
僕は女の話をよく理解していたつもりだった
女は僕に執着していた
女は僕に 私と付き合わない?っと言ったことがあったが 僕は動揺し自然の成り行きに任せると言ったのだった…
結局僕と女は付き合わなかった しかし複雑な関係ではあった
僕の部屋に遊びにきたりもしたが
純粋な精神的関係だった
僕は肉体的な関係を一切持たなかった
僕は女に全く性欲を感じなかった
女の体はすでに深く蝕まれていた…
それにしても人はこれ程までに堕落してしまうものなのかと思うと 僕は恐ろしかった
真面目に働いて実家の家具を買うような家族思いの女の子が 何人もの男に弄ばれ 搾取され 捨てられてしまう
僕は彼女を少しでもいい方向に向かわせようと様々な努力をしたつもりだがダメだった
唯一結婚することが救いだとも思ったが僕はそれだけはできないと思った
そして僕は諦めてもう電話に出ることも彼女からのメールを見ることもなくなったのだ…
僕はもう一切彼女に関わるつもりはない
しかしその姿は僕の心にねっとりとこびり付き僕はまた新たな絶望の真実を知ったのだった
3.19 2018