〈快楽の園〉
ここはタイの高原の避暑地
きらびやかな屋敷には一人の娼婦が住んでいる
適度に油が滲み出している黄金色の肌はきめが細かくて 少し汗ばんでいる
屋敷は香と香水の臭いで満たされていて 布団は常に清潔に保たれている
タイ中の権力者 金持ちが一度は寝たいと噂している
しかし この屋敷のありかを知るものは少ない
女は8人の男だけを 客にとっていた
8人の男だけがこの屋敷の場所を知っていた
この屋敷では あらゆる美酒が飲める
女はマッサージの達人だった
そして どんな心の痛みも取る魔法の言葉を話した
アヘンのように脳の芯から痺れさす魔法の言葉
その言葉を聞いた瞬間に 昨日のことはどうでもよくなり
明日なんかなくていいと思ってしまう魔法の言葉
事が終わったあと 女はその魔法の言葉で男を寝かしつけることができた
布団ごと 深く地中に沈んでいく
その地中には 極楽の景色が広がっている
地中から地上に戻ってくると 朝の優しい光の中で女が眠っている
この屋敷の朝は とてもゆっくりと時間が流れる
昨夜の余韻は残っておらず 新しい世界の始まりを感じさせる朝
小鳥のさえずり 少しずつ昇っていく太陽
霧に包まれた山の複雑な線が地上と空を分けている
軽やかな音楽の演奏がはじまる
新しい世界がはじまる
8.27.2016