妄想劇場 ~少女の夢芝居①~ | 気まぐれバードのキマグレコ

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何でも綴りたいことを綴っています。

終戦し、何年か経ち、町も立ち直ってきました。
そんな中、町には今までにないような、新しいものが次々と他所の国から入ってきました。
しかし、子供たちには伝えたいものがあります。




……………………


そこには、ひとりの少女がおりました。仮の名前を、ゆみちゃんとします。
ゆみちゃんは、何処にでもいるごく普通の小学生です。学年は、4年生です。
夏休みに入り、何かないかとブラブラしていたら…。

たまたま通りかかった広場に、おじさんの声が聞こえてきました。


「と、その時だった!」


おじさんが急に大きな声を出したから、ゆみちゃんはちょっとビックリしました。
すると、


「お嬢ちゃんも、こっち来て座んな。これ、今日はサービスしてやっから。」


そういうと、おじさんは箱からアイスを取り出しました。


ゆみちゃん「あ、ありがとう、おじさん。」


おじさん「いいってことよ。
えーっと、続きはと…。


それから……。」


ゆみちゃんは、おじさんが話していることに、夢中になっていました。


「今まで、こんな楽しいものがあるなんて、知らなかった。」


ゆみちゃんは、いつの間にか紙芝居をするおじさんに、憧れを抱くようになりました。


おじさん「はい、今日はこれでおしまい。また、明日な。」


子供一同「えー、もう一回だけ。」


おじさん「もう、日も傾いてきたし。明日な。1日、何回もすると、おじさんの商売あがったりだ。」


そう言いながら、おじさんは満面の笑みを浮かべました。
目尻には、多数の笑いジワが出来、それがさらにおじさんの顔が穏やかに見えました。


ゆみちゃんは、明日も来ようと決めました。


と、ひとりの子が


「ねぇ、この辺の子じゃないよね。どこから来たの?」


ゆみちゃん「うーんとね、あっちのほうから。」


ゆみちゃんは、となりの学校区へ来ていました。


「ふーん、じゃあ隣町か。紙芝居は、初めて見るの?」


ゆみちゃん「うん。こんな面白いもんが、あったんだね。」


「あ、名前まだ言ってなかったね。私、しずえ。しーちゃんって、呼ばれているの。あなたは。」


ゆみちゃん「わたしは、ゆみこ。みんなからは、ゆみちゃんって呼ばれているの。よろしくね。」


しーちゃん「よろしくね。

あ、そうそう。明日も見に来るんだったら、お小遣いがいるよ。」


ゆみちゃん「どうして?」


しーちゃん「紙芝居を見るには、アイスを買うという、決まりみたいなのがあるの。おじさんも、商売だしね。」


しーちゃんはそう言うと、微笑みました。


ゆみちゃん「そうなんだ。じゃあ、明日はお小遣い持ってくるよ。」


しーちゃん「日も暮れてきたし、早く帰った方がいいよ。また明日ね。」


ゆみちゃん「うん、じゃあね。バイバイ。」


こうして、ゆみちゃんは紙芝居にのめり込んでいくことに、なるのです。






※この物語は、フィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。