終戦し、何年か経ち、町も立ち直ってきました。
そんな中、町には今までにないような、新しいものが次々と他所の国から入ってきました。
しかし、子供たちには伝えたいものがあります。
……………………
そこには、ひとりの少女がおりました。仮の名前を、ゆみちゃんとします。
ゆみちゃんは、何処にでもいるごく普通の小学生です。学年は、4年生です。
夏休みに入り、何かないかとブラブラしていたら…。
たまたま通りかかった広場に、おじさんの声が聞こえてきました。
「と、その時だった!」
おじさんが急に大きな声を出したから、ゆみちゃんはちょっとビックリしました。
すると、
「お嬢ちゃんも、こっち来て座んな。これ、今日はサービスしてやっから。」
そういうと、おじさんは箱からアイスを取り出しました。
ゆみちゃん「あ、ありがとう、おじさん。」
おじさん「いいってことよ。
えーっと、続きはと…。
それから……。」
ゆみちゃんは、おじさんが話していることに、夢中になっていました。
「今まで、こんな楽しいものがあるなんて、知らなかった。」
ゆみちゃんは、いつの間にか紙芝居をするおじさんに、憧れを抱くようになりました。
おじさん「はい、今日はこれでおしまい。また、明日な。」
子供一同「えー、もう一回だけ。」
おじさん「もう、日も傾いてきたし。明日な。1日、何回もすると、おじさんの商売あがったりだ。」
そう言いながら、おじさんは満面の笑みを浮かべました。
目尻には、多数の笑いジワが出来、それがさらにおじさんの顔が穏やかに見えました。
ゆみちゃんは、明日も来ようと決めました。
と、ひとりの子が
「ねぇ、この辺の子じゃないよね。どこから来たの?」
ゆみちゃん「うーんとね、あっちのほうから。」
ゆみちゃんは、となりの学校区へ来ていました。
「ふーん、じゃあ隣町か。紙芝居は、初めて見るの?」
ゆみちゃん「うん。こんな面白いもんが、あったんだね。」
「あ、名前まだ言ってなかったね。私、しずえ。しーちゃんって、呼ばれているの。あなたは。」
ゆみちゃん「わたしは、ゆみこ。みんなからは、ゆみちゃんって呼ばれているの。よろしくね。」
しーちゃん「よろしくね。
あ、そうそう。明日も見に来るんだったら、お小遣いがいるよ。」
ゆみちゃん「どうして?」
しーちゃん「紙芝居を見るには、アイスを買うという、決まりみたいなのがあるの。おじさんも、商売だしね。」
しーちゃんはそう言うと、微笑みました。
ゆみちゃん「そうなんだ。じゃあ、明日はお小遣い持ってくるよ。」
しーちゃん「日も暮れてきたし、早く帰った方がいいよ。また明日ね。」
ゆみちゃん「うん、じゃあね。バイバイ。」
こうして、ゆみちゃんは紙芝居にのめり込んでいくことに、なるのです。
※この物語は、フィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。