「5番テーブル、出来たわよ。」
「3番テーブル、白ワインお願いします。」
「はいよ。」
慌ただしく働く厨房に、ウエイター、ウエイトレス。何処にでもあるような光景。
ただ違うのは、ここは雲の上。
どういうことかといいますと、ここは空飛ぶレストラン。そう、大型の飛空艇の中です。
完全予約制で、全部でテーブルは6つ。1テーブル、最大5人まで予約が出来るように、なっています。
コックは6人いますが、交代で4人いるようにしています。ウエイター、ウエイトレスは、2人ずついて、これも交代制です。
あとは、整備士が2人。それと、運転手が3人。
雨、強風の日は、飛ぶことが出来ません。
地上にも普通に店はありますが、オーナーの思い付きで3年前から、空飛ぶレストランをするようになりました。また、週末になると、ナイトフライコースというのがあり、夜も特別に運営しています。
これがまた好評で、空から見る街のネオンが綺麗で、食事しながら見るのが、最高だそうです。カップルや何かの記念日ということで、予約が殺到し、ついに1年待ちという状態になりました。
もちろん、普段の予約もかなり多く、8~9ヶ月は待ちがあるそうです。
そんな感じで、空飛ぶレストランは、大繁盛でした。
女性「ふう~、お疲れさん。」
ちょっとぽっちゃりとした体型で、この飛空艇のコック長兼リーダーのネイル。
ネイル「あとは、お願いね。」
男性「はいよ、まかしときな。」
男性の方は、かなり年配だが、飛空艇の整備の腕はピカイチの整備士のオーディエン。みんなは、オー爺と呼んでいる。
たまに居眠りしてしまうのが、ちょっといけないところだけど(笑)。
そして、オー爺のライバル、ハイドロ。
この2人は、若いときから、いがみあいながら切磋琢磨してきたそうだ。
ちなみにハイドロ曰く、腐れ縁だそうな。
ハイドロ「ふん、こいつに整備なんか任したら、すぐに墜ちるぞ。」
オーディエン「バカヤロ。お前の方こそ、墜ちる前に、まず飛ばんわ。」
ハイドロ「なんだと!」
オーディエン「お前さんから、ふっかけてきたんだろが。やるか!」
ネイル「はいはい、2人ともそこまで。
美味しい晩飯作って待ってるから、早く点検してね。」
2人は、一度見合わせたが、すぐにお互いに顔をそっぽ向けました。
ネイル「オーナー、ただ今戻りました。」
レストランのオーナーであり、空飛ぶレストランを考えた人、ヤーク。
ヤーク「ご苦労様。今日は、どうでしたか。」
ネイル「ええ、今日も相変わらず、反響はよかったです。また是非にと。」
ヤーク「そうですか、それはよかったです。
あぁ、そうだ。これはまだ誰にも、話していないんですが…。」
ネイル「なんです?」
ヤーク「実は、空飛ぶレストランの2号機を造って、増やそうかなと思っているんだが、どう思う。」
ネイル「駄目です!ただでさえ、今がいっぱいいっぱいなんですよ。それを、増やすだなんて。」
ヤーク「うーむ、そうか。
どんなに腕のいい、コックを雇っても?」
ネイル「駄目です、まわりません。」
ヤーク「そうか…。」
ネイル「そりゃあ、オーナーがお客のために、一生懸命に考えているのは、分かります。しかし、あまり手を広げすぎると、抱えきれなくなりますよ。」
ヤーク「確かに、それもそうなんだが。
分かった、もう少し考えてみるよ。」
どうやら、もっとお客に楽しんでもらいたい、という考えがオーナーには、あったようです。
※この物語はフィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。