僕の名前は、たけあき。幼稚園に通う、5才。実は………
ううん、その前に一ヶ月前から話すね。ある日、とっても不思議なものをおじいさんからもらったんだ。今は、もう残ってないんだけど。
その日は、遊びから家に帰る途中だったんだけど。気配を感じて、ふと後ろを振り向くとおじいさんがいたんだ。
おじいさん「ぼうや、飴をあげようか。」
突然の問いかけに、僕はびっくりしたんだ。それで、
おじいさん「これは、とっても不思議な飴玉でな。何でも分かるんじゃ。」
何を言ってるのか、分からなかったんだ。それでね、
たけあき「何でも!?そんな飴玉、あるわけないよ。」
おじいさん「じゃあ、試しにひとつやってみせてあげよう。」
おじいさんは、そう言うと飴の入った袋を懐から、取り出した。そして、
おじいさん「この飴玉はな、半透明だろ?これにな、自分の強い思いを込めるとな、色が変わるんじゃ。」僕には、分からないことを言い始めたんだ。
おじいさん「じゃあ、ぼうやの今日の体調を、占ってみようかな。」
そう言うと、願いを込めながら、飴玉を優しく掌で包みこんだ。そして、
おじいさん「おお、今日は元気じゃな。ほれっ、赤じゃ。」
そう言うと、飴玉がいつの間にか半透明が赤に変わっていた。
たけあき「すげぇ。どうやったの。」
と、言うと
おじいさん「ほらっ、ひとつやってみなさい。」
そう言うと、僕に飴玉をひとつ手渡してくれた。
半信半疑になりながらも、僕は飴玉に思いを込めた。
たけあき「あぁ、すごい。緑に変わったよ。」
すると、おじいさんが
「この飴玉を、全部あげるよ。」
そう言うと、僕に飴玉の入った袋を手渡してくれた。
たけあき「えっ!でも……。」
おじいさん「いいから、もっていきなさい。」
そういうなり、おじいさんは去っていった。
たけあき「おじいさん、ありがとう。」
翌日、僕は飴玉が入った袋を持って、お母さんと一緒に病院へむかった。僕の大好きな親戚のお姉ちゃんが、病気で入院していた。
コンコン、と病室の扉をノックしたら、奥からか細い声で「どうぞ。」と聞こえた。
僕は、怖いのと不安とで胸がいっぱいになっていた。
中に入ると、そこには笑顔のお姉ちゃんがいた。でも、その笑顔は少し苦しそうにも見えた。
僕は、元気よく
「お姉ちゃん、こんにちは。大丈夫?」
と、挨拶をした。
「ありがとう、たけあき君。」
と、お姉ちゃんは微笑みながら、挨拶を返してくれた。
それから、少し話して僕は飴のことをはなした。
「お姉ちゃん、この飴玉、とっても不思議なんだよ。」そう言いながら、飴を袋から取り出した。
続けて、
「今この飴玉、色がついてないでしょ。これをね、思いを込めながら、優しく手で包みこむとね。」
そういって、僕は思いを強く込めた。
すると、飴玉は青に変わった。
「ほらね。」
そういって、お姉ちゃんに見せた。
「凄いね。」
お姉ちゃんはそう言いながら、僕の頭を撫でてくれた。
「そろそろ帰ろっか。」
と、お母さんが言うとお姉ちゃんが
「もうすぐしたら母が来ると思いますので。」
と、引き止めた。
「そうしたいけど、今日は時間ないから明日にでも、改めて。」
そうお母さんは言い残し、病室をあとにした。
翌日、お見舞いに行くと、病室の入り口におばさんが立っていた。
すぐにおばさんが
「ごめんなさい、せっかく来て頂いたんですけど、まゆみね体調がちょっと悪いの。」
そう言うおばさんの目が、少し悲しそうに見えた。続けておばさんが
「昨日の夕方から、少し調子が悪くなってきて。今は、落ち着いているけど。」と、言ったあとに続けてお母さんが
「いいえ、急に来たんですもの。まゆみちゃんにお大事にって、伝えといて。」とだけ、おばさんに言うと病院をあとにした。
僕は、かえりの車の中で、飴玉を手で優しく包み、思いを込めた。
今日の色は、藍色だった。その時、僕は思った。
「明日の事も分かるのかなあ?」
そう思うと、もう1つ飴玉を袋から取り出した。
そして、思いを強く込めた。
すると、飴玉は黄色になった。
「明日は、少し元気になるんだ。」
僕は、そう解釈した。
思った通り、翌日は少しましになってた。おばさんから家に電話があったらしい。でも僕は少し、お姉ちゃんに会うのが怖かった。もし、思ってるより悪かったら、なんて思うと少し怖くなったんだ。
でも、病室へいくとそんな予想は、覆された。
「こんにちは、お姉ちゃん。大丈夫?」
僕は、いつも通りに明るく振る舞った。
そこにはいつもの笑顔があった。
今日も、飴玉に思いを込めた。昨日と変わらず、黄色だった。
しかし、それから3日後。いつものように、飴玉に思いを込めると………突然お姉ちゃんが、
「ごめん、出ていって。早く!」
といい、僕の飴玉の入った袋を飛ばした。僕は、訳が分からず泣きながら出ていった。その時の飴玉の色は、紫だった。しかし、何故か転がり出た飴玉に色がついた。グレー、黒、そして真っ白な色だった。
そしてその夜、お姉ちゃんの容態が急変した。シーツや枕は、吐血により赤に染まっていた。
手術はしたが、あとどれくらい持つか、回復するか分からないらしい。僕は、病室から持ってきた飴玉に、思いを込めた。が、出た色は濃いグレーだった。
「お姉ちゃん…………。」そう思うなり、僕はお母さんにすがりながら、激しく泣いた。そして、その日の昼、お姉ちゃんは亡くなった。
それから、一週間後いまだに僕は、悲しみにくれていた。ふと横を見ると、飴玉の入った袋が、転がっていた。中を見ると、あと一粒だけ入っていた。それを手に取ると僕は、
「お姉ちゃんの今を、今の状態を知りたい。」
もうこの世にいないことは、分かっている。でも、天国で幸せなのか知りたい。
矛盾した思いを、飴玉に込めていた。飴玉は、ゆっくりと色が変わっていった。それは、眩いくらいの金色だった。
僕はそれを、ラップに包み化粧箱に入れた。僕の大事な宝物だから……………。
完。
※この物語はフィクションです。登場人物は架空です。