火曜妄想劇場 ~玄関⑤~ | 気まぐれバードのキマグレコ

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数分経って、加純が口を開いた。
加純「明宏さん、全部話すわ。」

私は、加純が覚悟を決めた目をみて、ただ頷いた。


加純「今から話すことは、高校の時から話さないと分かりにくいから、そこから話すね。」


明宏「…………あぁ。」


加純「高校2年の時、あることに初めて気付いたの。」


明宏「どういうこと?」


加純「ある日にね、嫌なことがあって、落ち込みながら帰宅したの。その時にね…。」
と、私を厳しい目で見た。続けて、
加純「昨日に戻ればいいのに。って、強く思いながら玄関を開けたの。そしたらね……、戻ったの。」


明宏「えっ?何が?」
私は、だいたいを察し戸惑った。少し間を空けてから加純が、
「時間がね、戻ったの。というより、私がね過去に戻ったの。」
と、告白した。


明宏「ちょ、ちょっと待って。」
と、私は戸惑った。それでも加純は私の知りたいことを察したのか、続けて話した。


加純「ある日ね、母がね事故にあったの。命には、関わらなかったけどね。それで、必死の思いでもう一度能力が使えたらと思い、玄関を開いたの。そしたらね、前日に戻れたの。私は、記憶をそのままにね。」


更に続けて、
「だから、母に「明日は時間を少し遅くして、あの道を横断して。」って、しつこく忠告したの。そしたら母が、車が単独事故を起こしてたって。顔を青ざめながら、私に語りかけてきたの。何で分かったの?って。だけど、本当のことは言わず、ただ悪い予感がしたって、ごまかしてた。」
と、私に明かしてくれた。私は、その話に複雑な気分でいた。そこで沸いた疑問をぶつけた。


明宏「ねえ、加純。じゃあ加純は、実年齢は少し違うということ。」
と、加純に問いかけた。


加純「実際には、一ヶ月程だけだよ。そんなには…。」
と、言いかけたところで、私は遮った。


明宏「じゃあ、加純はそれだけ分、逃げてきた訳だ。でもそれだったら、何で結婚してからも使わなかったんだ。」
と、少し息を荒げて加純に問いかけた。


加純「あの時は………、いえ、結局時間戻しても何も変わらないし、結局逃げただけだったの。」
と、弱気に話した。すぐに私は、
「結局、逃げてるだけにしか能力使ってないし。そんなんじゃ、何の解決にもならない。分からないのか、ただ困難を避けてるに過ぎない。加純、君はそんな弱い人だったのか!それに、私を巻き込んで…。何で、私は…。」
加純が、すぐに
「私が、願いを込めてたからよ。ごめんなさい、実は。私が、玄関開けたらそうなるのだったら、逆も有り得るんじゃないかって、産まれたばかりの猫で試したの。そしたら、玄関を私が開けた瞬間に消えたの。」私は、
「じゃあ、あの時もそうだったのか。」
と、納得した。加純が泣きながら、
「本当にごめんなさい。でも、明宏さんに言われて目が覚めたわ。もう、この能力は使わない。」
と、決心した。でも、私は1つまた疑問が沸いた。
「でも、加純。1つ教えてくれ。なんで、こんなにも戻れたんだ。いままでは、一日とかだったのに。」
と、問いかけた。すると加純は、
「私、初めてだったの。もしかしたら、もっと戻れるかもって思いながら使ったら、戻れたの。」
と、答えた。私は、1つ溜め息をついて
「こうなったのは、仕方がない。けど、逆は出来ないのか。今までは、2008年にいたんだ。じゃあ、そこまで戻ることも可能じゃないのか。“無い”未来はむりかもしれないけど、“ある”未来なら飛べるんじゃないのか。でも、その前に絶対約束してくれ。もう、能力は使わないと。」

加純は涙目で、
「ありがとう明宏さん。これで最後にするよ。」
と、約束した。私は、
「じゃあ、どうしたらいいんだ。」
と、加純に問いかけた。加純は、
「2008年の6月22日に戻りたいと強く願って下さい。私と手を繋いで、玄関を出たら戻れると思います。」



そして、意を決して二人は玄関を開けて外に出た。




それから一ヶ月後……



私達は、2008年でいつもの……いや、いつもと違って充実した日々を過ごしていた。何故なら、私は無事に再就職出来たから……。
(完)


※この物語はフィクションです。