昨日のことが気になり、あまり眠れなかった、次の日の朝。私は、起きるなりすぐにカレンダーを確認した。
………やはり、2005年だ。
「おはよう、明宏さん。」
と、加純はいつも通りに私に声を掛けた。
「ああ、おはよう、加純。」
と、何事もなかったかのように、普通に返した。正確には、普通を演じたと言えばいいだろうか、おかしな話だが。
「はい、明宏さん。今日もお仕事頑張ってね。」
と、加純は手作り弁当を私に手渡してくれた。
「あ、あぁ…。」
少し声がうわずりながら、微妙な返事をした。
「なあ、加純。」
と問いかけた。
「はい、何ですか?」
と、加純。
「今、私は働いているんだよな?会社、行っていいのかなあ?」
と、私は加純に問いかけた。
すぐに加純が、
「どうしたの?明宏さん。昨日から、おかしいよ。」
と、びっくりして私の顔を覗きこんだ。
「えっ?いや、昨日から頭の中が混乱して。」
私は、素直に答えた。
「会社休んで、病院で診てもらったら。」
加純は、私を気遣ってくれた。まあ、こんなことを言ってたら当然か。
私は、
「いや、大丈夫だ。行ってくるよ。」
と、少し慌てながら会社へと向かった。しかし、会社へ向かいながらも、行っていいものなのか不安になりながらも、とりあえず会社へ向かった。
会社に着くと、
「おはよう!」
と、聞き覚えのある歯切れのいい声が、聞こえた。同僚の高階だ。
「ああ、おはよう。」
と、私は挨拶を返した。
「あれ?普通に挨拶してる。」
と、こころの中で思った。会社の中に入ると、
「おはようございます。」
と、私は挨拶を自然にしていた。
「………おはよう。」
と、そっけない挨拶が返ってきた。藍沢課長だ。
「そういや、仲悪いの忘れてた。」
と、こころの中で思いつつも、3年前のことを思い出していた。
「でも、何で私だけ戻ってないんだ?」
考えるだけで頭の中が更に混乱してきた。
※この物語はフィクションです。