
あの頃はまだスタッフさん全員がマスクを付けた光景は物凄く異様に見え、いつもなら挨拶と共にハンドシェイクをしていた方が、“今日はなしで”とおっしゃっていましたが、まだ少しユーモラスな言い方でしたね。

そして開場が近づくと、スタンド席への入場口に列ができていましたが、お客さんのマスク着用率は半分くらい。それでも多く感じ、何やらこれまでに感じたタイプとは異なる緊張感が、大森ベルポートのあの高い天井まで充満していたのでした。
そしてこの日を境に、全てのイベントが消滅したのでした。
コートのギリギリまで観客席や観戦エリアがあり、飛んでくるボールや選手を巧みに回避しながらゲームを楽しむという4D観戦。言わば“飛び出すバスケ”ですね。
そして横15m×縦11mのスペースさえあれば、問答無用でコートを敷き詰めて、街角だろうと商業施設だろうと観光スポットだろうと、いきなり大会会場にしてしまう神出鬼没スタイルも3x3の醍醐味です。
街を行き交う人々に、高いゴールとデカい音、野蛮な選手達のぶつかり合いで、強引にこちらに注意を引かせ、気付けば夢中になっている。これが世界各地で行われている手口です。
ちなみに自分が「3×3 JAPAN TOUR」でテーマソング的に使用している楽曲は、三味線がメインの楽器になっている曲です。それは“JAPAN TOUR”という趣旨に沿ったものだから、それと同時に、外国人観光客の人達がいかにも日本らしい音色に誘われて、会場に寄ってくれるんではないか、そんな考えで選曲しました。
しかし現在、これらは全て無効化されています。
2020年2月23日以降、大会運営方法の全面見直し、その場にいる全員への安全対策、配信環境の整備に、配信内容のブラッシュアップ、それらにひとつひとつ挑む3x3関係者の方々の姿を目の当たりにしてきました。
さらには、現場では誰がDJしているのか映像からでも分かるようにDJブースの前面にロゴを掲示して頂いたり、DJブースの横に実際の配信が確認できるようにモニターを設置して下さるなど、以前には考えられない手間やコストがかかっています。
広い世界へと解放され、多くの人と再会する日は時間の問題でやってきます。
その時には、2010年代よりも明らかに洗練された大会運営、相も変らぬ選手達の人生劇場が会場で待っています。
血生臭いゲームの合間には、よちよち歩きのキッズの永遠に届かないフリースローチャレンジで箸休めしたいですし、DJブースを大破させる勢いで選手が突っ込んでくるあの恐怖を、お客さんにもそろそろ味わって頂きたいですね。
街角のコートを取り囲む観衆。飛び出すバスケ、3x3の凱旋。
その最初の日はいつどこで、どんな心境になるのかワクワクしています。