【午前9時半】

感動も束の間、
横に寝かされた息子に見とれていると、
再びあの痛みが襲ってきた
後陣痛だ


第二のお産
今度は、まだ子宮に残っている胎盤を出さないといけないのである
息子を出したのだ
もう、これぐらいへっちゃらさ
楽な気持ちで、いきむ


ドゥロロロ~


胎盤が出た
出し切ったスッキリ感に、思わず、
気持ちいい
と、発していた


取り出した研修医さんにお願いして、
胎盤を見せてもらった
息子と私を繋いでいた胎盤
思ったよりも大きく、息子くらいあった
グロテスクの塊だった
胎盤さん、
10ヶ月ありがとう
心の中で別れを告げた


第二の出産を終え、
再び息子に見とれていると、
会陰切開で切られた部分を、縫合する手術が始まった
先生が、研修医にやり方を説明している
およよ
という事は、
私の大切な大切なお股は、
研修医さんの練習台になるのかい
一抹の不安がよぎる
お股を縫われるという恐怖と、
冷静になって訪れた会陰切開の痛みで、
再び顔が歪む
呻き声が漏れる


「動かないで下さい!麻酔足しましょうね」
私があまりにむごむご動くので、
注射される事になった
お股に注射
見えはしないが、
想像しただけで痛い
しかし、あの陣痛の痛みに耐えたのだ
これぐらい、なんのその!
気持ちを強く持つ
無事、麻酔を終え、縫われていくお股
痛みはないが、何とも言えぬ
「縫われている感」
だけはしっかりと感じる


その気持ち悪さから、
おう、おう
と、変な声が漏れる
研修医さんだからか、
縫合時間がやたら長い
がんばれ、研修医!
私の大切なお股、
ちゃんと縫っておくれよ!
心の中でエールを送る
無事に、縫合完了


これで、やっとすべて終了
心も身体も、ヘトヘト
疲れきっている
産後2時間は、絶対安静らしく、そのまま分娩台で寝かされていた


母は入院の準備に行き、
分娩室には私と息子の二人になった
さっきまでお腹の中にいた息子が、
今は横で寝ている


私、産んだんだ


急に実感が湧き、
溢れてくる愛しさ
辛い辛いお産も、
この子に会うために頑張れた
ありがとう
ありがとうね
お前も、頑張ったね
産まれてきてくれて、
ありがとうね
心から思った


お産を終え、
ゆったりとした気持ちの中、
息子への感謝と共に、
母への感謝の気持ちが溢れてきた


ずっと一緒に待機してくれた母
ずっと手を握ってくれた母
ずっと声をかけて励まし続けてくれた母
力いっぱい抱きしめてくれた母
一緒になって呼吸してくれた母
一緒になって汗を流してくれた母


苦しむ娘の姿を見続けるのも辛かったよね
ずっと側を離れず、
ずっと側に居てくれたから、頑張れた
励ます声が、
共にする呼吸が、
肌に感じる温もりが、
大きな大きな力になった
ありがとう
ありがとう
感謝の気持ちでいっぱいになった


同時に、
母が、これだけの思いをして、私を産んでくれたんだと思うと、
また感謝の気持ちが溢れてきた
産んでくれて、ありがとう
初めて心の底から思った


母には感謝の言葉しか見つからず、
ありがとう
を、沢山伝えた


ありがとう
ありがとう
ありがとう
ありがとう
何回言っても足りないくらい、
ありがとう



今回の出産を体験し、
今まで味わった事のない痛みに悶え苦しみ、
大切な家族が増えた喜びと愛しさを知り、
支えてくれる家族の存在の大きさを、
改めて強く強く感じさせられた
とっても、
とっても、
貴重な体験になった
辛い辛い時間も、
今となっては宝物である





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妊婦の私は、
「出産」がゴールで、
「出産」がすべてだった


出産を終えた今、
出産はゴールでなく、
スタートなんだと、
思い知らされている
「育児」という先の見えない道のりが、
スタートしたのである


これから先、
楽しい事はもちろん、
沢山の困難苦難が待ち受けているであろう


でも、
今回の出産を通して、切に思った
どんなに苦しくても、辛くても、
終わりは必ずやって来る
その後には、
笑顔が待っている
苦しくて、辛い分、
最高の幸せを感じられる



出産で体験した事を胸に、
これからの育児、人生に生かしていきたいと思う