記録的な猛暑が終わったと思ったら、今度は台風の直撃を食らった関東地方。その前の8月の某日、夕方、激しい雷雨とともに、雹がバラバラ落ちて来るは停電はするは(一分未満だったけど)という、過去経験したことのないような凄い目に遭って、なんだこれは天変地異かと思った僕ですが、そんな夏の荒れ模様の天気の日に聴きたくなるCDがあります。


燃えよウータン/ウータン・クラン
ENTER THE WU-TANG 36 CHAMBERS / WU-TANG CLAN


「ズッドン、バッコン」って感じのえらいヘヴィなビートに乗っかっていきなり、"Bring the motherf**kin' ruckus!"という物凄いフレーズで始まるこのアルバム、野太かったりしわがれてたりする、おっかない声のおニイさん達がハードなストリート・ライフをライムし継いでいくという態になってますが、何より耳を惹くのがサウンド・プロダクションを手がけるRZAが創り出すトラック。ダークで歪んでてビョーキ。かつアタマで作った感じが全くしないのに、恐ろしく前衛的。こいつは凄い。リリースは1993年。僕はずっと後で初めて聴いたんですが、リアルタイムだったらどれほど衝撃を受けたでしょう。
このアルバムの中で、いやヒップホップ全ての中でも最も好きな曲のひとつが"Can It Be All So Simple"。グラディス・ナイト&ザ・ピップスの"The Way We Were"がサンプリングされた曲ですが、初めて聴いた時、いやもう背筋がゾクリとしたものです。ヒップホップっていうのはハードな中にも、しばしばセンチメンタルだったりメロウだったりすることがあってそれが魅力なのですが、この曲は一言で形容するならメランコリック。というか「鬱」という言葉を音にしたらこうなる、という曲と言えましょうか。最小限の音数で最大限の効果。RZAは凄い。

#After laughter come tears...