12
夏子は、意を決したように亮二に告げた。
「あなたは、お父さんなの? あたしの……お父さんなの?」
亮二は、夏子のそんな言葉に何も言えなかった。
ふたりを沈黙が包む。
カフェに流れるスティールパンのBGMが、寂しげに響いていた。
「君は……本当に、春子さんの娘なのか……?」
「はい……」
やっと口を開いた亮二の質問に、夏子はそう答えた。
そして夏子は亮二の目を見据えて、しっかりとした声で言う。
「あたしは、ずっとあなたのことを恨んでいた。だけど……」
「だけ、ど……?」
夏子は、ひとつ大きく息を吸って言葉を続ける。
「逢ったときに感じたの……この人は、あたしのお父さんじゃないって……」
亮二は夏子の言葉ひとつひとつを噛み締めるように、しっかりと心に刻んでいた。
「あなたは、あたしの運命の人だって……どうしてだかは分からない。だけど、そう感じてしまったの……」
亮二は、そのとき夏子に何と話すべきかと考えあぐねていた。
19年前の、あの頃。
亮二は、確かに春子を愛していた。
しかし、亮二は。
あの日、春子を捨てたのだ。