やべ……詰んだ……。


俺は、正直そのときそう思った。

ルリちゃんに連絡を取る手段は、もうない。


そう思うと、急に胸が苦しくなった。

失うと思うと惜しくなる。

本当に、そう思った。


あっ、そうか……!


俺は、カウンターの奥で洗い物をするマスターを見る。

まだ、手段はある。

そう、あるじゃないか!


立ち上がった俺は、マスターのそばまで歩いた。


「マスター……あの……ルリちゃんの住所教えて欲しいんですが……」

「えっ……? あー、そりゃ無理だ。個人情報だし、教えられないな……」

「いや、でも、あの……教えてください……」

「絶対ダメだよ……申し訳ないけど、さ……」


マスターの言うことも、もっともだ。

冷静に考えれば、何者かも、どういう関係なのかも分からない男に……。

女の子の住所を教えるなんて有り得ないだろう。


もしかしたら、諦めろってことなんだよな……。

そうだよな……。


その時の俺は、明らかに弱気になっていたんだ。