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迷いがなかった訳ではない。



そうすることで、何が起こるのかも何となく分かっていた。


だって、エンジェルとブラックエンジェルは表裏一体……。


つまりは、一心同体だからだ。


でも……。



そうするより、他に術がなかったんだ。



そしてそれは、確固たるエンジェルの意志でもあった。



エンジェルが望むこと……それは、俺の願いでもある。



頭の奥から声にならないエンジェルの想いが伝わってくる。



ユート……生きて……ブラックエンジェルを消して……。



ブラックエンジェルの喉にズブズブとエンジェルが消えていく。



「グ、グワッ!エンジェル……おま、え……!」



ブラックエンジェルのカラダが溶け始めた。


ドロドロと流れるように、その姿が崩れ始めていた。



そして、真っ黒い光が弾けた。



眩しいような、真っ暗なような不思議な光が一瞬にして部屋を包む。



俺は、必死で目を開こうとした。


だけど、何も見えない……。



しばらくして、やっと俺の視力が回復する。



ぼんやりとした輪郭が見える……。



エンジェル!?



俺の目の前には透明で輪郭だけが分かる、エンジェルの姿があった。