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「やめろ! エンジェル……お前……!?」



ブラックエンジェルが、我慢出来ない様子で目を覆う姿がぼんやりと見えた。



そして真珠が、真っ青な光を放ち始めた。



同時に、真珠がドロドロと溶けて傷口を覆う。



液状に真珠が、俺の腹ワタの奥まで染みこんでいくのが分かる。



痛い……熱い……でも……!?



ふと傷口を見ると、そこはいつの間にか塞がっていた。



意識もだんだんハッキリして、頭も冴えて来た。



ブラックエンジェルは「ウォーウォー」と唸り声を上げて苦しんでいる。



目をやられたのか、両手で両目を覆って膝からガクンと崩れ落ちた。



「エンジェル……お前は、本当に消えてしまう気なんだな……ちくしょうめ……」



ブラックエンジェルの声に、俺は無意識に反応していた。



「エンジェル! どこだ! 俺を助けに来てくれたんだよな!? エンジェル!?」



そのとき、俺の耳元でかすかに声が聞こえた。



それは……ずっと聞きたかった、間違いなくエンジェルの声だった。



「ユート……死なないで……ユートは死んじゃダメなんだお……ユート……生きて……」


「エンジェル! お前は……俺を助けて……消えてしまう気なのか? いやだよ、エンジェル……どこにも行かないでくれ!」


「ごめんね、ユート……これは、自分自身への罰なんだ……ユートを……愛してしまった罰……」


「罰だって? 何が罰だよ! 俺を愛してくれたことが罰だなんて……そんなのおかしいじゃないか!?」



そのとき、ブラックエンジェルがゆっくりと顔を上げた。



「ユート……お前のせいだぜ……エンジェルは……お前のせいで消えるんだ……うわっはっはっはっは!」


「ユート……生きて……ブラックエンジェルを……消して……」



エンジェルの声が聞こえる……そして俺は、いつの間にか左手にあるものを持っていることに気づいたんだ。