32


慌てて部屋を飛び出した俺は、腕時計をするのを忘れていた。



それでも、無意識にiPhone4だけはデニムのポケットに入っていた。



iPhoneを立ち上げて時間を確認する。



デジタル表示の数字が、午前10時32分を表示していた。



俺は、二日続けて同じ行動を取っていた。



ただ違っているのは、今そばにエンジェルが居ないことだった。



下北沢駅から小田急線に乗って、新宿へ出る。



総武線に乗り換えて……目指すのは、もちろん秋葉原だ。



俺は、同じようにエンジェルに頭の中で語り掛ける。



「なぁ、エンジェル……どこに行けば良い?」



当然のように、エンジェルは何も応えてくれない。



俺は、不思議な気持ちだった。



もう、どこにも居ないはずのエンジェルを……それでも近くに感じている。



悲しみを通り過ぎて、本当にオカシクなってしまったのかもしれない。



それでも俺は、不思議とまた……エンジェルに逢える予感がしていた。



いや、本当は……そうでも思わない限り、どうにかなってしまいそうだったからかもしれない。



いつの間にか電車は、秋葉原駅のホームに滑り込んでいた。



いつものようにドアのそばに立っていた俺は、一番で電車から飛び出す。



小走りにエスカレータを駆け下りて、電気街口を目指す。



まるで落とし物を捜すかのように、昨日と同じルートを歩いた。



何かキッカケがあるかもしれない……ただ、それだけを信じて……。