31
どのくらいの時間が経ったのだろう?
時間の流れが現実的に感じられないほど、俺は深い悲しみに包まれていた。
真珠を握りしめて、俺はエンジェルのことを考えていた。
どうしてエンジェルは、自分を犠牲にしてまで俺を生かしたのだろう?
俺には、生かされる価値があるなんてとても思えなかった。
時間にすれば、ほんの半日の出来事だったかもしれない。
だけど、エンジェルと過ごした時間が俺の人生の全てのような気がしていた。
俺は、これからどうすれば良い?
いったい、どうすれば……?
考えても、答えなんか出るはずがない。
そんなときは、行動を起こすしかない……。
俺は、フラフラする足取りでバスルームにたどり着く。
冷たい水と熱い湯を交互に浴びて、体内を活性化させる。
シャワーを終えた俺は、素っ裸のまま部屋の真ん中に仁王立ちする。
右の拳を固く握りしめて、エンジェルがいた俺のすぐ上空に突き上げた。
そして、ゆっくりと手を開いて……俺はエンジェルに触れようとした。
「なぁ、エンジェル……君は、今でもおれのそばに居るんだろ?」
俺の問いかけに、エンジェルは何も応えない。
本当に、存在が消えてしまったのか……。
でも、俺は……。
バスタオルを取り出して、濡れたカラダを乱暴に拭く。
素早く服を着た俺は、再び部屋を飛び出した。
目指す場所は……まずは、あそこだ……。