21
部屋に戻った俺は、俺のすぐ上にいるエンジェルに言った。
「なぁ……訊いてもいいか?」
「……うん。何でも訊いて良いよ……」
俺は、迷っていた。
訊かなくても良いことは、訊かない方が良い。
そんなことは、良く分かっていた。
だけど、俺は……エンジェルのことが知りたかった。
俺のことは、エンジェルはすべて分かる。
でも俺は、今のままじゃエンジェルのことが何も分からない。
俺は、エンジェルのことを何も知らなかった。
ついさっきまでは、それでも良いと思っていた。
だけど……。
俺の心が、確実に動き始めた……。
そう、エンジェルに向かって真っ直ぐ……。
だから俺は、知りたくなったんだ。
エンジェルのことを。
エンジェルの全てを……。
スゥーっと俺の正面に降りてきたエンジェルが俺の目をじっと見つめている。
さっきよりも、少しだけ姿がはっきりしたような気もする……。
いや、気のせいか……。
「君は……どうして現れたんだ? もしかして……やはり俺の幻想なのか?」
「……どうしてって……それは……」
エンジェルは、苦しそうに口ごもる。
しかし、一生懸命に言葉を選びながら……こう言ったんだ。
「幻想なんかじゃないよ……妄想でもない……」