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俺の現実って、一体何なのだろう?
俺は、ただ普通の生活を送っていると思っていた。
でも、それは……ただの幻想だったんだ。
俺は奏を傷つけ、逃げ出した奏は絢音に俺を託した。
俺自身、全く意識していない別の俺が何かをしでかしていたらしい。
絢音は、カウンセラーだという。
俺と共に生活して、愛しあった……。
それも、俺を治療するためだというのか?
俺は、絢音を愛していた。
そして、当然絢音も俺を愛していると思っていた。
だけど……。
そのとき、詩子がゆっくりと口を開いた。
「絢音さんは……創さんを愛してしまったんだよ……だから、創さんと一緒には居られなくなった……」
俺は、ただ黙って詩子の言葉を聞いていた。
「創さん……菜摘(なつみ)ちゃんのこと憶えてないよね……菜摘ちゃんのことで、創さんは……」
「菜摘? なつみ……分からない。それは……誰なんだ?」
俺は、必死で頭の中のメモリーを検索する。
しかし、どのファイルにも菜摘という女の記憶は無かった。
「その菜摘って人が……俺の……今の状況を作ったということなのか?」
「そうだよ……菜摘ちゃんが亡くなったことで……創さんは……」
えっ?
それはまるで、前に聞いた奏の事と同じではないか?
奏は生きていた。
でも、その菜摘は……。