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俺という存在は、何だ?
この3人の女たちにとって、俺という存在は?
俺を助けたい……。
3人の女たちは、そんな同じ思いだと言った。
俺は、助けられなければならない状態だったのか?
確かに、俺は「解離性同一性障害」らしい。
今の俺の記憶がない時には、別の俺が存在しているという。
しかし俺は、そのことが良く分からない。
実際には交わらない、今の俺と別の俺。
俺自身にとっては、確かにそうだ。
しかし、他人にとってはそんな俺が俺自身なんだ。
今の俺が記憶を無くしている時には、全く違う俺が存在している。
そのことに俺は、実感がない。
でも、確かにそれが現実なんだ。
そして俺は、それを受け入れることに決めた。
別の俺のことを知りたい。
だって、それは本当は別の俺ではなくて、それも俺自身なのだから。
「なぁ、教えてくれないか……俺のことを、全て……」
思わず口にした俺のそんな言葉に、絢音が真っ先に反応した。
「あたしは、カウンセラーだよ。創を助けるために来た、カウンセラー……」
「そうなんだ……俺は……何も気づかなかったよ……」
「創、ごめんね……あたしは、結果として創を苦しめただけなのかもしれないね……」
「……いや、それは違うよ……絢音が、そういう事で俺のそばに居てくれたとしても……」
「……居てくれたとしても……?」
そのとき絢音の冷静な顔から、少しだけ悲しげな表情が見て取れた。
そう……だって、俺と絢音は……間違いなく愛し合っていたのだと俺は信じていたのだから……。