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奏(かな)が消えてから、俺は絢音(あやね)と暮らすようになった。



その辺りのことも、実は良く憶えていない。



俺は、奏のことを忘れていた。



絢音との生活の中で、突然詩子が現れた。


そして俺は、少しずつ過去を思い出し始めた。



俺の中には、きっといくつかの人格がある。


その人格が、どう違うのかは良く分からない。



その人格を行き来するときに、俺は記憶を失う。


いや、正確には全てを失うわけでもないらしい。



記憶の混濁。


一時的な記憶の喪失。



それらが混ざり合って、突然顔を出すこともある。



それに、やはり思い出したくないことは忘れている。


それはたぶん、自己防衛本能なのだろう。



自分の意識でコントロール出来ない状態で、いくつかの人格を飛び回る。


それが、今の俺の現実なんだよな……。



そんなことを考えていた俺に、絢音が言葉を続けた。



「今日は、本当のことを言うね……ちゃんと聞きたい?」


「……あぁ、もちろん。俺は、そのためにここに居るんだからな……」


「分かったわ……一度全てを受け止めて……きっと、もう大丈夫だから……」



絢音は、まるでカウンセラーのような口ぶりで俺に言う。


絢音の言葉は、俺の心を優しく落ち着かせていた。



「創の病気の原因は……たぶん、子どもの頃の虐待だよ。憶えてる?」


「……いや……全然記憶にないよ……だって俺は、優しい両親と兄弟が……えっ!?」



そのとき俺は突然、自分の記憶が本物なのだろうか?という恐怖に襲われていたんだ。