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そして、詩子は?
詩子はどこへ消えたんだろう?
絢音と詩子、ふたりが何を考えてこうなったのか?
俺には、全く見当がつかなかった。
俺は、そんな疑問のひとつを奏(かな)にぶつけてみた。
「奏……詩子は? 詩子は、どこに行ったんだ?」
「あたしを呼んで、出掛けたよ……」
「そうか……でも、どこへ?」
奏は、その答えを返さなかった。
詩子は、いったいどこへ行ったんだろう?
でも俺は、そのことに関しては悪い予感がしなかった。
詩子は、またここへ戻って来る……。
そんな予感がしていたからだ。
「本当に、ごめんね……創に辛い思いをさせたね……」
「いや、もういいんだ……それは、もういい……」
「詩子から聞いたの……創が……大変なことになったって……」
「大変なこと? 俺は……大変なことになんかなってないよ……」
「創は……自分で気づいてないんだよ……」
奏は、何を言っているんだ?
俺には、奏の言葉の意味が良く分からなかった。
だけど……。
「それは、もしかして……俺の記憶のことか? 」
「……そうだよ、創の……記憶障害っていうか……」
俺は、その時……とてつもない恐怖を感じていた。
自分が憶えていないことで……何が起こっていたのか……!?