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俺は、動揺していた。



奏(かな)が、生きていた……。


そのことは、とても嬉しかった。



でも、それならどうして……?



どうして、今まで奏は姿を現さなかったのか?



そして、詩子は……どうして、そんな嘘を付いたのか?



俺は、頭を抱えていた。



いったい、どうして……?



「奏……お前は、今までどうしていたんだ?」



俺の問いかけに、困った顔で奏は口をつぐむ。



しばらくして、奏はゆっくりと口を開いた。



「創ちゃん……ごめん、ね……」



それだけ言葉を発して、奏はポロポロと涙を流し始める。



いま、奏を問い詰めても仕方ないよな……。



ソファーに腰を下ろした俺は、ゆっくりと奏を抱き締める。



そして、優しく髪を撫でながら奏が落ち着くのを待った。



どのくらいの時間が経っただろうか?



少し落ち着いた様子の奏は、またゆっくりと口を開いた。



「あれから、すぐ……日本を離れたの……」


「そう、か……でも、良かった……奏が生きていてくれて……」


「うん……ごめんなさい……でも……」


「ん? でも、何?」


「あたしは……」