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詩子は、あの部屋に居るのだろうか?
そのとき俺は、ふとそんなことを考えていた。
いや、きっと居るはずだ。
そんな予感がする。
でも……。
俺は、何故かまた不安を感じていた。
だけど……。
もう何が起こったとしても、驚いたりはしない。
考えて見れば、変な事ばかりだ。
俺が駅前で見たのは、奏(かな)の幽霊?
詩子は以前から俺を知っていた?
俺と奏は、付き合っていた……?
詩子が罠を仕組んで、俺と奏を別れさそうとした?
そして、奏は自ら命を絶った?
結果として、絢音は奏から俺を奪ったのか?
そして、何よりも不思議なことは……。
そう、俺の記憶が曖昧なことだ。
ところどころ抜け落ちている記憶……。
そしてそれは、簡単には思い出せそうにない。
俺は、取り戻したいんだ。
必ず……何が起こったのか? 俺は、何を見たのか?
タクシーが、奏のマンションの前に着く。
タクシーを降りた俺は、オートロックの暗証番号を押す。
詩子が押していた番号を、必死で記憶しておいて良かった……。