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俺は、必死で失おうとする意識を引きとめようとしていた。
頭の奥から、ジンジンと鈍い痛みが定期的に襲ってくる。
それは強く、弱く、徐々に勢いを増して行く。
視界が狭くなって、部屋の景色がぐるぐると回り始めた。
「どうしたの!? 大丈夫なの?」
詩子の焦ったような声が、遠くに聴こえる。
そして、プツリと俺の意識は途絶えた。
気が付くと、そこは何故か俺の部屋だった。
壁にかかった電波時計を見る。
俺が詩子の……いや、奏(かな)の部屋を訪れてから3時間しか経っていない。
どうやって俺は、ここに帰って来たのだろう?
詩子が独りで、俺をここに連れて来たというのは考えにくい。
だとしたら……誰かが現れたのか?
それとも、俺は自分で帰って来たのか?
……良く、分からない……。
俺は、フラフラと台所に歩く。
そして、冷蔵庫から良く冷えたコントレックスのボトルを取り出す。
そばにあったグラスに、2リットルのペットボトルからミネラルウォーターを注ぐ。
そして、それを一気に飲み干した。
少しだけ、頭の痛みは残っている。
だけど、かなり楽になっていた。
俺は、部屋を出てタクシーに乗る。
そして、もう一度奏の部屋に向かったんだ。