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俺は思いのほか冷静に、詩子の告白を聞いていた。
何故かは、分からない。
しかし俺には、いま話されていることが現実のことのようには感じられなかった。
詩子は、ゆっくりと言葉を続ける。
あの日、あたしは……奏(かな)ちゃんのケータイから創さんにメールを送ったの。
創さん、憶えてないんだよね……?
そうか……そうだよね……。
詩子の表情が固くなる。
それは、今まで見たこともないような真剣な表情だった。
俺は、思った。
真実を知ることが、本当に良い事なのだろうか?
でも……辛くても、そうしなければならない。
俺にとっても、詩子にとっても……。
俺は、覚悟を決めて詩子の瞳を見つめる。
そして、ゆっくりとひとつ頷いた。
あたしね、嘘のメールを送ったの。
奏ちゃんのフリをして……。
創……ごめんね……もう、創には逢いたくない。
創が絢音のことを好きだって分かってる。
絢音も……創が好きなのは知ってるから。
だから、もう終りにしよう。
そんなメールを送ったの……。