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詩子は、フゥーっとひとつ息を吐く。



そして、苦しそうにゆっくりと言葉を続けた。



「奏(かな)ちゃんと創さんは愛しあっていたんだよ……本当に幸せそうだった……」


「……そう、なんだ……」



俺は、なぜ憶えていないんだろう?



なぜ……。



……確かに記憶は、あいまいなものだと思う。



過去のことが本当にあったことなのか……それさえも不安に思える。



記憶なんて、自分の思い込みだけで出来ているのかもしれない。



俺は詩子の髪を優しく撫でながら、そんなことを考えていた。



「あの日……奏ちゃんは……創さんとケンカしたらしくて……」


「部屋を出て、帰って来なかったのか……?」



詩子は、大きな瞳に涙を溜めながらゆっくりと頷いた。



「……奏ちゃんは……誤解したんだよ……」


「……誤解? ……誤解って、何を?」


「それは……」



詩子は、言葉を詰まらせた。



「なぁ、詩子……君は、自分のせいで奏が亡くなったって言ったよな……」



詩子は、ゆっくりと頷く。



俺は、詩子の瞳を見つめながら言った。



「そんなハズは……ないよ……どうして、そう思うんだ?」


「だって、あたしが……」