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その夜、俺たちは激しく愛し合った。



心もカラダもトロけるような、一体感。


俺は、間違いなく奏(かな)に溺れていった。



裸のままベッドに寝転がって、奏を抱き締める。



背中から腰のラインを指でなぞる。



指先に感じる、滑らかな肌の感触……。


奏の甘い声が、直接俺の頭の中に響いていた。



「奏……ずっと離したくない……」



そう言った俺に、奏は何も言わずに……ただ寂しそうに微笑んでいた。



そうやって始まった俺たちの関係は……長くは、続かなかった。



付き合ってみて分かったことだが……奏は、精神的に不安定だった。



機嫌が良い時は、めちゃくちゃに明るいが……。


些細なことで気分を害すると、むちゃくちゃ暗くなる。



俺は、それでもそんな奏のことを愛していた。



俺が一番辛かったのは……酒を呑み過ぎると、奏は別人のように変わることだった。



まるで別の人格が現れたかのように、乱暴になった。



暴力的に、俺に不満をぶつける。


しかもそれは、俺の心当たりが無いことでだった。



「……浮気してるんでしょ、創……知ってるんだから……」


「……誰と、だよ……してないよ、そんなこと……」


「嘘ばっかり! 知ってるんだから……あたし……」



そう言いながら奏は、部屋の中のものを壊し始める。



俺は小さな怪我を追いながらも、そんな奏を抱き締めて止めた。



それでも俺は……奏を愛していたんだ。