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奏(かな)と初めて逢ったのは、あのカフェだった。



あの頃、俺は……孤独だった。



彼女を作る気もなかったし、ただ自由でいたかった。



自分から誰かと、深く関わりを持つのが鬱陶しかった。



だけど……それでも、俺は……誰かと繋がりたかったのかもしれない。



だから、意味もなく人が集まる場所に行くようにしていた。



でも俺は、誰かを積極的に誘うようなことはしなかった。



それは……誰かと深く繋がることが怖かったからなのかもしれない。



そんな、ある日……俺は、ひとりの女と出逢った。



それが……奏だった。



「こんばんは! どうしたの、何か寂しそうな顔してるよ!」



屈託のない笑顔で、そんなふうに奏は俺に話し掛けてきた。



「あぁ、いや……別に……」



正直、最初は奏のことを鬱陶しいと思った。


だけど……。



俺は明るい奏に、間違いなく少しずつ癒されていた。



その夜は、ほんの少しだけ言葉を交わしただけだった。



そして、そのカフェに何度か行くうちに……俺は奏と話す時間が増えていった。



俺は、見たかったからあのカフェに行っていたのかもしれない。


そう……奏の笑顔を、ずっと……。



ある日、奏はいつもと違って塞ぎ込んでいた。



「どうした? 何か寂しそうだよ、奏……」



そう言った俺の胸に……あのとき奏は、ゆっくりとカラダを預けたんだ。