45
俺は、詩子に掛ける言葉を選んでいた。
しかし、うまい言葉が見つからない。
そうなれば俺は、ただ詩子を抱き締めるしかなかった。
どうして詩子のお姉さん…奏(かな)さんが亡くなったのか……。
その理由を詩子に訊くのは酷な気がしていた。
詩子が話したくなったら、俺は聞けばいい。
そう……それで良いんだ……。
俺は、間違いなく詩子が愛しい。
涙を流し続ける顔だって、とても可愛く思えた。
俺が……詩子を護りたい……。
そんな気持が、フツフツと俺の心を支配し始めていた。
だけど……。
詩子は、それに応えてくれるのだろうか?
俺は、また悪い予感がしていた。
いや、でも……。
そのとき詩子が、ゆっくりと顔を上げて俺を見た。
潤んだ瞳で、じっと真っ直ぐに。
「……創さん……何も訊かないんだね、あたしに……」
「……あぁ……辛いのなら、無理に話すことはないよ……」
「優しいんだね、創さんは……さすが奏ちゃんが好きになった人……」
そう言って詩子は、ゆっくりと微笑んだ。
俺は、また何と返事をしたら良いのか分からずに……じっと詩子の瞳を見つめ返すだけだった。
「……奏ちゃんは、創さんの小説をずっと読んでいたんだよ……知ってた?」
「……いや、ごめん……分からなかった……」
「そっか……」
詩子は寂しそうな顔をして、ゆっくりと目を伏せた。