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えっ?
詩子の言葉に俺は一瞬、思考が停止する。
それは……。
詩子へと向かっていた俺の気持ちに、冷水を浴びせられたような気がしたからだ。
それは、不思議な感情だった。
俺の気持ちは、確実に詩子に向かっている。
だけど……。
本当に、そうなのだろうか?
俺は、そのとき気づいてしまったのだ。
俺が愛していたのは……本当は……。
「お姉ちゃんは、ずっと創さんのファンだったよ……毎日、小説を読んでたの……」
「そう、なんだ……」
俺は、それ以上の言葉がなかった。
それは……それ以上、聞くのが怖かったからだ。
これ以上、何も聞きたくない……。
これ以上、何も知りたくない……。
それが俺の、正直な気持ちだった。
だけど……俺は、知らなければならない。
知らせたいと思った、詩子のためにも……。
俺は、スゥーっと息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
そして、詩子についにこう訊いた。
「お姉さんに……何か……あったんだね……?」
詩子は何も言わずに、ただゆっくりと首を縦に振った。
「お姉ちゃん、いなくなっちゃった……」