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「うん……じゃぁ……行こうか……」
俺は、詩子の大きな瞳を見つめ返しながら遠慮がちに言った。
「……うん……じゃぁ、こっち……」
詩子が、遠慮がちに俺のシャツの袖をつかむ。
そして、ゆっくりとシャツを引張るようにして詩子は歩き出す。
歩き出した俺の左側を、詩子は歩いている。
遠慮がちに、俺の肘に詩子は腕を回した。
この前逢ったとき、詩子は俺をネットカフェに置いて姿を消した。
でも、今……俺のすぐそばに居てくれる。
去って行った絢音とは、詩子は違う……。
俺は、そう信じていた。
決して絢音の代わりではなく、絢音を忘れるために無理をしているのでもない。
俺には、もう……詩子が大切だった。
詩子が居てくれたからこそ、俺は何とか生きている……。
それほどまでに、俺は……詩子に依存してしまっていた。
そんなことを考えながら、俺は詩子と寄り添って歩く。
言葉を交わす訳でもなく、目を合わせる訳でもない。
でも、いま確実に俺と詩子の心は通い合っていた。
「創さん、ここだよ……」
目の前には、大きなマンションがあった。
割と新しそうな、良いマンションだ。
「こっち……」
詩子は、今度は俺の手を引いてマンションの玄関へと歩き出した。