32


それから長い時間、俺は気が抜けたようだった。




創に合わせる顔がありません。



わたしは……他に好きなひとが出来ました。


本当に好きなひとが……。




絢音は、手紙にそう書いた。



合わせる顔がない……?



その意味は……絢音は俺を裏切ったということなのか?



それは、間違いなく……誰か他の男と一緒に夜を過ごしたということだよな……。



わたしは……他に好きなひとが出来ました。


本当に好きなひとが……。



その言葉が、俺の胸の奥深くを鋭くえぐっていた。



本当に好きなひと、か……。



俺は苦笑いしながら、また何度も手紙の文字を読み返す。



胸が痛い……いつの間にか、カラダも小刻みに震えていた。



背中にイヤな汗をかきながら、俺は涙を流し続けている。



絢音が出て行ってしまったという現実……それは間違いのないことだ。



確かに、俺は絢音に対して油断していたのかもしれない。



絢音は、絶対に俺を裏切らない。



それを、無条件で俺は信じきっていた。



だから、俺は……きっと……。


絢音に対して、気を使っていなかったのかもしれない。



絢音はきっといろいろなサインを出していたはずだ。


だけど俺は、何も気づかなかった。



それだけで、俺のダメさが思い知らされていた。



絢音……。