18
勘定を済ませて、店を出る。
折りたたんだ千円札を渡そうとする詩子に、俺はつい微笑んでいた。
「いいよ、俺が誘ったんだから!」
そう言った俺に、詩子もバツが悪そうに微笑んだ。
少し酔っている様子の詩子の肩を、俺は自然に抱いていた。
そう……それがごく当たり前のような気がして……。
しばらく歩いて、ネットカフェに入る。
平日の今日は、ほとんど客も居ないようだ。
「朝までのパックでいいですか? ソファータイプにしますか、フラットタイプに?」
受付カウンターの向こうから、店員がヤケに明るくそう訊いた。
「えーっと、ソファータイプでいいよね?」
詩子が、恥ずかしそうに頷いた。
そのとき詩子は、俺の陰に隠れるようにして立っていた。
そんな風にされると、まるでこれから悪いことでもするみたいじゃないか……。
ラブホじゃないんだし……。
ネットカフェは、仕事の空いた時間に使ったことがある。
ヘッドフォンをしてネットを見たり、オンデマンドの映画を見たり……。
絢音と暮らし始めてからは、そんな自分独りの時間はこういった場所にしかなかった。
もちろん女と来るのは始めてだった。
それに、こんな夜中に来るのだって……。
前払いで、料金を払う。
ナイトパックで6時間、二人で2560円か……安いんだな……。
薄暗い通路を歩いて、割り当てられた狭いブースに入る。
ジャケットを脱いで、ハンガーを使って奥の壁に掛ける。
「詩子の上着も貸しなよ……掛けてやるから……」
俺がそう言ったその瞬間、詩子が俺にギュッと抱きついて来た。