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駅前を通り過ぎて、長いスロープ状の道を歩く。
俺のすぐ後ろを、詩子がトコトコと付いて歩いていた。
俺は振り向きながら、詩子のペースに合わせて歩くスピードを落とす。
「ありがとう! 優しいんだね!」
詩子が楽しそうに、そう言った。
俺は、その言葉には答えずにただ笑顔を返す。
「もう! いじわるなんだから!」
そう言った詩子は、いきなり俺の左腕にぶら下がった。
えっ?
予想外の詩子の行動に、俺の思考は一瞬にして停止した。
「こうしてると……恋人同士に見えるかな?」
詩子は恥ずかしそうに、小さな声でそうつぶやいた。
俺は苦笑いしながら、詩子の髪を右手で撫でてやる。
詩子は可愛いな……。
それが今の俺の、偽らざる気持ちだった。
だけど……俺は詩子には恋愛感情を持っていない。
きっと、この後もずっと……。
詩子に対する気持ち……。
それはそう、妹に対するような……そんな感情だと思う。
だって俺には、絢音が居る……。
こうやって詩子と逢っていることだって、本当は良くないのかもしれない。
だけど俺は、どうしても詩子に逢ってみたかった。
別に俺は、浮気をしたいわけじゃない。
だけど、詩子のことが……どうしても気になって仕方がなかった。
俺は、そんな言い訳をしながら……いま詩子に逢っている。
そして俺と詩子は、一軒のバーに着いた。