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「もしもし、智樹さん? 今週土曜日、また逢ってくれますか? ……また連絡するね!」
和奏は、琴音の代わりではない。
俺は、そう思おうとした。
だけど、やはり和奏と逢うと琴音のことを意識してしまう。
琴音のことを思い出してしまう。
琴音が再び現れたことで、そんな気持は薄れると思った。
だけど逆に、俺はそんな気持を強く感じていた。
琴音に、戻りたくなんてない。
それは、男の意地でもある。
一度捨てられた女に戻るなんて……。
そんなことは、あり得ないじゃないか……。
俺の意識は、すべて琴音を中心に回っていた。
それは、否定しようとしても否定できない本心だった。
俺は、どうすれば良い?
一体、どうすれば……。
そのとき、病室に看護師が入って来た。
「加藤さん……目が覚めましたか……良かったですね!」
その看護師は、ニッコリと笑う。
「ぼくは、どうしたんですか……何か……悪い病気ですか……?」
看護師は、笑顔のまま首を左右に振る。
「過労ですね……。お仕事、忙しかったんですか?」
「……あぁ……まぁ、そうですね……」
確かに、仕事も忙しかった。
でも、過労の本当の原因は……。