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金曜日。
俺は、美雨に逢う。
美雨の部屋で、二人きりで過ごす。
千尋のことで、俺はショックを受けていた。
千尋が呼んだ名前……その男は何者だろうか?
そのことを、俺は千尋に確かめることが出来なかった。
そんな不安な気持ちを抱えながら、美雨を抱く。
そんな不安な気持ちが、俺を激しく燃えさせていた。
「トモさん、今日は変だよ……」
美雨が不安そうに、俺を見つめる。
「ううん。別に何でもないよ……俺は、美雨が大好きなだけさ……」
俺は、美雨が可愛くて仕方なかった。
小さくて幼く見える美雨を大切にしたかった。
美雨は、彼氏が居ても俺をきっと愛してくれている。
そう信じることが出来るだけで、俺は幸せなんだ……。
いつの間にか俺は、確実に美雨を愛していた。
でも俺は、美雨にふさわしい男じゃない。
美雨の幸せを考えたら、そのうち美雨から離れなければならないだろう。
だからこそ、俺は美雨を激しく愛する。
美雨の知らないことを、俺が教えてやる。
そうすることで、俺は満足だったんだ。
だけど俺は、美雨を失うのが怖かった。
本当に……。