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琴音が、ゆっくりと口を開く。
「あたし、ね……トモを誤解してたの……」
琴音が潤んだ瞳で、じっと俺を見つめていた。
「トモは……他に好きな子がいると思ってた……だから、トモから離れたの……」
そんな琴音の言葉を聞いても、俺は冷静だった。
琴音の言葉に、嘘はないだろう。
だけど、それはいまさらな言葉だ。
「……そんなことないよ。俺はお前しか居なかった……」
そう言いながら俺は、考えていた。
どうして琴音が、俺に逢いに来たのか……。
いま、このタイミングで……。
そのことが、俺の心に引っかかっていたのだ。
「ごめんね、トモ……あたし……」
「……もういいよ、琴音……。何か……あったんだろ……」
琴音は悲しそうな顔で俺をじっと見続けている。
いたたまれなくなった俺は、ゆっくりと目を伏せて言葉を続けた。
「男にでも裏切られたのか……それで、俺に逢いに来たのか?」
意地悪な質問だとは分かっていても、俺はそう琴音に訊いていた。
「……あたしは、トモにひどいことしちゃったんだよね……ごめん、なさい……」
やはり、そうか……。
俺は、琴音の身勝手さに呆れていた。
しかし、それでも琴音は俺に逢いに来た。
その事実は、間違いなく俺の尖った心を癒し始めていたんだ。