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俺はスゥっと息を吸って、気持ちを落ち着かせる。



俺は、琴音に逢いたい……。


それが俺の正直な気持ちだった。


だけど……。



俺を捨てた女に、いまさら逢ってどうするというのだ?


でも……。



琴音が俺に逢いたいと言う。


そのことは、俺が望んでいたことではなかったのか?



もう一度、琴音を抱きたい……。



それは俺の、偽らざる思いだった。



もう二度と逢えないと思っていた琴音が、現れた。



変に意地を張っても、後悔するだけだよな……。


俺は、冷静に考えをまとめた。



俺は、もう一度琴音に逢う。


そして、琴音を抱く。


そう決めた。



「……分かった。どこに行けばいい?」


「トモの部屋に行きたいの。いい、かな……」



ふーん……そうなんだ……。



琴音は、何を考えているのだろう?


あの場所は、琴音自身が嫌になって飛び出した場所のはずなのに……。



「いいけど、さ……もう、あの頃の部屋とは違うぜ……」


「うん……分かってる……だけど、トモとふたりでゆっくり話したいから……」



まぁ、いいか……。



俺は、ゆっくりと歩き出す。


そして俺の部屋に帰って、琴音を待つことにした。