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えっ……。
俺は目の前に現れた女の姿に、一瞬にして固まっていた。
琴音……?
琴音……!
信号が変わった瞬間、俺はその女に向かって駆け出した。
琴音なのか……?
琴音が姿を消して以来、俺はずっと琴音を探していた。
そして琴音は今、一年ぶりに突然俺の前に現れた。
駆け出した俺は、その女の肘をつかんで引き寄せる。
「琴音、なのか……?」
驚いた顔で、その女が俺を見た。
そして、少し怯えたように俺に言った。
「違います……。わたしは、和奏(わかな)です……」
消え入るような和奏の声に、俺は確信していた。
琴音に、良く似ている……。
でも、この子は琴音ではない……。
「ごめん……驚かせたね……君にそっくりな子を知っててね……間違えた……」
「そう、なんですか……? いいえ。大丈夫です……」
ぎこちなくニッコリと笑顔を作った和奏に、俺は苦笑いする。
「良かったらお茶でも飲まない? 驚かせたお詫びに奢るよ……」
和奏は驚いたような顔で、それでもゆっくりと頷いたんだ。
近くのカフェに入った俺と和奏は、小さなテーブルを挟んで向かい合う。
しかし……琴音に似ている……。
俺は、ボーッと和奏の顔を見つめ続けていた。