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俺の毎日は、充実し過ぎていた。
もちろん、仕事もちゃんとやる。
時間を作るためには、効率的に仕事を進める必要があるからだ。
そして作った時間を、女に逢うために使う。
これ以上に、充実した時間の使い方があるだろうか?
しかし、正直かなり無理をしなければならない。
毎週、毎日違った女と逢うのはもちろん不可能なことだ。
そして逢ったとしても、毎回その女を抱くわけではない。
一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、その必要性は薄くなるものだ。
出逢ったばかりの頃と同じテンションで、女を抱き続けるのは難しい。
それはたぶん、男としての遺伝子に刻み込まれたものなのだろう。
種の繁栄のためには、次から次へと女を渡り歩く必要がある。
もちろん、次から次へと孕ませる訳ではないが……。
そういった行動に出るのは、いわゆる本能なのだろう。
俺は、そんな都合の良いことを考えながら女を渡り歩いている。
でもそれは、もちろん自分を正当化させたいがための詭弁だった。
俺は、正直だんだんと辛くなっていたのだ。
何のために、1週間の女を並べるのか?
その意味も、良く分からなくなっていた。
俺は、ひとりの女を選ばなければならない。
もちろん、そんなことも考えている。
でも、俺は……。
そんなことを考えながら、俺は渋谷の街を独り歩く。
土曜の昼下がり……今日は天気も良くて、暖かい。
カフェでカフェ・ラテをテイクアウトして、のんびりと歩く。
交差点の信号待ちで、俺は向かいにいた女に目が釘付けになる。
それが、和奏(わかな)との出逢いだった。